「義憤」とは?
「義憤」(ぎふん)とは、不公正なことや、人として準ずるべき道義などに外れた人や行い、事柄などに対して湧き上がる憤(いきどお)りの感情を指す言葉です。
道義というのは、なかなか分かりづらい言葉ですが、人として行う正しい道、すなわち道徳と言い換えることも可能です。
「義憤」は、やさしくいえば、正しくないことや不道徳な行いなどに感じる怒りのことといえるでしょう。
「義憤」の使い方
何かに「義憤」を感じるということは、言葉の意味からいえば、その人が人の道の道理、道徳や、なにが不公正であるかを知ってこそ、といえます。
とはいえ、道義などの難しい概念は抜きにしても、たとえば、国民が税金の値上げなどによる苦しい生活に耐えているのをよそに、政治家が賄賂を受け取っていたら、多くの人が怒りを感じることでしょう。
人間の怒りは不公正・不平等な感覚に由来することが少なくなく、道義や道徳への理解はどうあれ、「義憤」にかられることはどんな人間でもあり得ると言えます。
大仰なニュアンスがある
「義憤」は、少々古めかしく、大仰なニュアンスもある言葉であるため、どちらかといえば、個人的な怒りというよりは、理不尽な犯罪や政治的汚職など、社会的な事件への怒りなどとして用いられることが多いようです。
友人に貸した本を返してもらえない、上司が昨晩の個人的な飲食代を「接待費」として請求しているのを見てしまった、などは、もちろん不道徳・不公正なできごとですが、「義憤」を用いると少々大袈裟になってしまいます。
個人的なできごとであっても、社会的正義の観点から怒りを訴えたい場合には「義憤」でも構いません。しかし、あくまでも個人的な価値観に基づく怒りということであれば、「不満」「憤り」などが適切な使い方といえましょう。
「義憤」の文例
(A男)
赤字が続くからと社員の給料をカットしながら、我が社の幹部たちは、役員手当に不正な水増しをしていたんだ。社員一同、強い義憤にかられているよ。
(B男)
むかしは、拷問から逃れたい一心で、やってもいない犯罪を認めてしまい、罪人とされた人々がかなりいた。冤罪で人生を失ったなんて、義憤を覚えるよ。
(C子)
私の会社は、女性向け商品が主流で、社訓は「女性の幸せのために」なのに、妊娠を告げたとたんメインラインから外されたの!義憤に燃えちゃうわ!
「義憤」の字義解説
「義憤」をより深く理解するために、「義」「憤」それぞれの漢字の意味を検証していきましょう。
「義」
「義」の音読みは(ぎ)、訓読みは(よ・い)。意味は四つありますが、そのどれもが現代でも様々に用いられています。
【意味】
- 人としてふみ行うべき道。利欲を離れ、道理にしたがうこと。(例:信義)
- 意味。(例:字義)
- 血縁のない家族、親族関係。(例:義母)
- 実物の代替物。(例:義足)
「義憤」で用いられる「義」は「1」の意味です。
「憤」
「憤」の音読みは(ふん)、訓読みは(いきどお・る)。意味は以下のふたつです。
【意味】
- 激しく立腹すること、憤ること。(例:憤懣)
- ふるいたつこと。(例:憤気)
「義憤」で用いられる「憤」は「1」の意味です。
「義憤」は、この二つの漢字を単純に重ねた内容ではなく、「義」なきことを「憤る」という意味をなす言葉です。
「義憤」の類語
「正義感」
「正義感」とは、不正なことに対して義憤を感じ、正義を尊ぶ気持ちのことを指します。怒りを感じるとはいえ、「義憤」と比べれば、怒りの感情が前面に出た言葉とはいえません。
不正、不公正に対しては、正義感から憤りを感じることもあるでしょう。反面、たんに正義を守ったり尊ぶためになにごとかをなす場合は、怒りや憤りからではなく、良きことのために立ち上がる、という感情であることがほとんどです。
【文例】
- 町で1人暮しのお年寄りを狙った空き巣が続いたため、正義感に燃えた町長は、警察だけに頼らず自ら町内の夜回りをはじめた。
- 正義感が強い由美子さんは、両親が共稼ぎのために1人で夕食を食べる子供が多いことに胸をいため、自宅で「子供食堂」を始めた。