「土地勘」とは
「土地勘(とちかん)」とはその土地に関する情報に詳しいことです。地形や地理、交通状況などに通じていることですね。
例えば、住宅や建物の情報。自分の住んでいる地域や通勤通学先なら周囲にどんな施設があるのか覚えていることでしょう。JRや自動車を利用しているなら、交通機関や道路の混雑具合も頭に入っているかもしれません。
坂になっている道や行き止まりになっている道路などの情報も含みます。工事中の場所や通学路といった生活事情もそうです。こういった、住んでいる人や訪れたことのある人にしかわからないような情報を体得している状態を「土地勘」という言葉で表します。
「土地勘」の使い方
土地勘がある
「土地勘」は「ある」か「ない」かで語られます。その場所に詳しいなら「土地勘がある」、疎いなら「土地勘がない」です。ドライバーやデリバリーの求人で書かれている「土地勘のある人」とは周辺地域に詳しい人ということですね。
【例文】
- 配達スタッフ募集。運転免許必須。土地勘のある人歓迎します。
- さすがに土地勘のないやつを一人で放り出すわけにはいかない。
- 土地勘がある人に協力を依頼した。
土地勘をつかむ
「土地勘をつかむ」という表現もネット上では見られます。その地域に詳しくなること、地域の事情を理解することという意味のようです。同じような意味で「土地勘を養う」や「土地勘を身に着ける」といった言い回しがされることもあります。
【例文】
- 引っ越してひと月。このあたりの土地勘もつかめてきた。
- 初めて訪れる地域なので、あらかじめガイドブックで土地勘を養っておく。
「土地勘」か「土地鑑」か
ところで、「土地勘」は「土地鑑」とも書かれます。本来正しいのは「土地鑑」であるとも言われますが、テレビや新聞でよく目にするのは「土地勘」の方でしょう。どちらが正解なのでしょうか。
「土地勘」の由来
由来から言えば、正しいのは「土地鑑」の方であると言えます。この言葉、元々は警察で使われていた言葉です。今でも推理小説に出てくる「犯人は土地鑑のある人物に違いない」というやつですね。
そしてこの「鑑」には手本や模範、判断や考えの基準という意味があります。「彼は警察官の鑑だ」は模範的な警察官ということです。
お手本やマニュアルは判断や考えの根拠にもなりますよね、つまり、「土地鑑」とはその土地について考えたり判断したりするための根拠となるような、知識や経験のことと言えそうです。
主流は土地勘
「土地勘」という表記は本来、誤用です。警察の捜査ですから「勘」に頼って行うわけにはいきませんからね。なお、「勘」とは理屈や推理によらないでもわかるという心の作用です。「山勘」のようなものです。
ところが、現在では「土地鑑」よりも「土地勘」の方が多く使われています。ほとんどの新聞社やテレビ局は「土地勘」に統一しているとさえ言われるほどです。なぜこうなったのでしょうか。
一説によると、一般人には「勘」の方が肌感覚に近かったためと言われています。どこに何があるのかなんとなくわかる、このあたりのことは大体わかるという感覚で使われていたので、「勘」の方が適していたというのです。
土地感はNG
現在では、本来の形であった「土地鑑」はもちろん、誤用から広まった「土地勘」もどちらも正解とされています。
ところが、「土地感」という表記も新たに生まれてきています。感覚的にわかるから、「土地感」なのでしょうか。
当然と言えば当然ですが、この「土地感」は誤用です。一般的になれば、将来的には「土地勘」のように正解になるかもしれません。しかし、まだ市民権を得ているとまでは言えないのが実情です。