「手前」の意味
「手前」は「てまえ」と読みます。主な意味は次のとおりです。
- 自分の前
- 自分に近いほう。こちらのほう。
- 他人に対する、ていさい。
- 自分を謙遜して言うことば。
- (俗語)相手のことを乱暴に呼ぶ言葉
- (俗語)自分自身を指す代名詞
俗語として、「てめえ」と読む場合、上記の5や6の意味で用いられます。これ以外にも、茶道における作法、所作や出来栄えという意味の「おてまえ」を、「お手前・御手前」と表記することもあります。(お点前・御点前とも表記)
「手前」の使い方
- 好きなものを取るように言われたので、手前のものを選んだ。
- 健康のため、ひとつ手前の駅で降りて歩くことにしている。
- 一人でもやると言った手前、断れなくなってしまった。
- まことに恐れ入りますが、手前どもの店では承っておりません。
- 手前(てめえ)の好き勝手にはさせねえぞ。
- 手前(てめえ)でもわけがわからなくなった。
「手前」を含む慣用表現
ところで、ビジネスなどにおいて、「クッション言葉」とは、相手への気遣いから表現を和らげるために添える言葉(例:恐縮ですが・差し支えなければなど)です。
ここでご紹介する「手前」を含む慣用表現も、クッション言葉としてビジネスシーンで用いられることがあります。
「手前勝手」の意味と使い方
「手前勝手」は「てまえがって」と読みます。「自分の都合のいいように考え行動を起こすこと」を指す、「自分勝手」と同じ意味の言葉です。
【例文】
- 彼女は手前勝手な意見を言うばかりで、こちらの話はまったく聞いてくれない。
- 誠に手前勝手なお願いではありますが、打ち合わせを14:00からに変更して頂くことは可能でしょうか。
上の例文の「手前勝手な意見」は「自分勝手な意見」を表します。下の例文はクッション言葉としての用例。「手前勝手なお願いではありますが」は、「身勝手なお願いで申し訳ないのですが」というへりくだった表現です。
「手前味噌」の意味と使い方
「手前味噌」の読み方は「てまえみそ」で、「自分で自分の作ったものをほめること」を表す言葉です。「味噌」は食品の味噌のことですが、「趣向をこらしたところ」という意味もあります。これは、昔は各家庭で味噌を手作りしており、それぞれ工夫をこらしていたところからきています。
【例文】
- 手前味噌を並べるわけではないが、うちの娘は勉強もできてピアノも上手だ。
- 手前味噌ですが、今回の新作はよくできていると思います。
上の例文のように、「手前味噌を並べる」という言い回しもよく使われます。自慢話をする時に「自慢じゃないけど」という前置きをすることがありますが、それと同じような使い方です。
下の例文はビジネスシーンなどで耳にすることがあるでしょう。「自信を持ってお勧めします」と言いたい時に用いる謙虚な表現です。これら二つの例文のように、「手前味噌」はクッション言葉として用いられます。
「手前」の英語表現
- 自分に近いほう・こちらのほう=this side
- 〇〇の少し前で=just short of 〇〇
- 〇〇駅の一つ手前=one station before 〇〇
- 子供の手前=in front of one's children/the children
- 約束した手前行かなければならない=Since I have promised, I have to go.
また、「手前味噌を並べる」は「sing one's own praises」、「手前勝手な人」は「s self-centered person」と表現します。
馬術用語としての「手前」
競馬の用語で「手前を替える」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。この場合の「手前」とは「左右の脚(前脚)のうち、遅れて着地する脚」のことです。
右脚が遅れて着地する場合は「右手前」、逆は「左手前」と呼びます。カーブする方向や疲労の度合いによってその着地する脚を替えることを「手前を替える」と言います。
体重移動やムチなどによる騎手の合図で行われますが、スムーズにできるかどうかは馬によって個体差があります。レースの行方を左右することもある、重要な動作です。