「同衾」とは?
「同衾(どうきん)」とは、ひとつの夜具(やぐ:寝るために使う布団・毛布・寝巻などの総称)で共に寝ること、という意味です。
誰かと誰かがひとつの布団・毛布で寝るわけですから、少なくともその両者は、ただ偶然同じ寝具で一緒に寝るだけの赤の他人とは言えません。むしろ、お互いがお互いを信頼し、心も身体も相手に許していることの証と言えるでしょう。
ご想像がつくかと思われますが、「同衾」は主に男女関係について用いられる言葉です。誰かと誰かが「同衾した」と言えば、性的行為の暗喩、あるいは性的行為に及んでもおかしくないような夫婦や恋人などの関係であることを示唆します。
「同衾」の使い方
「同衾」は、既にご説明した通り、「同じ寝具で寝るほどに親しい男女関係」を指して使われる言葉です。その字の通りに「同じ布団で寝ること」のみを意味する用例はほぼありません。
男女の愛情によって行われる夜の営みは、生物的にも社会的にもごく普遍的な行為ではありますが、世間に向かって明け透けに表現するものではありません。そこで、直接的な言葉を避け、「同じ寝具で寝ること」と婉曲にほのめかす表現が「同衾」です。
「同衾」はかなり古風な表現ですので、現在使用されているのは時代小説の中などに限られています。一般的には、「(誰かと)寝る」「ベッドを共にする」などの言い回しがほぼ同義で用いられます。
用例
- 私の母は古風な人だったので、「式を挙げるまでは、どんな異性とも絶対に同衾してはならぬ」と厳しく言いつけられていた。
- 意中の人が、隣町に住む男性と同衾したと聞いて、彼はたいそう落ち込んだ。
- 初めて異性と同衾したときは、緊張でまったく落ち着かなかったものだ。
「同衾」の関連語
「同衾」は、男女関係のことを意味すると説明してまいりました。では、そのような意味を匂わせることなく、「本当に一緒の寝具で寝ているだけ」という意味を表したい場合はどのような言葉があるでしょうか。
以下に「共寝(ともね)」と「添い寝(そいね)」の二つの言葉をご紹介します。
「共寝」
「共寝」は、読んで字のごとく「共にひとつの寝床で寝ること」という意味です。「同衾」の意味も含まれていますので、男女関係にも使われますが、例えば「子供と共寝した」と言う表現は不自然ではありません。
「添い寝」
「添い寝」は、「寝ている人のそばに寄り添って寝ること」という意味です。「寄り添って」いるだけですので、男女関係を匂わすニュアンスはほぼありません。なかなか寝付かない、あるいはいつ目を覚ますかわからない乳児などを相手に「添い寝する」と使われます。
ただし、一部のネットコンテンツでは、カップルなどが一緒のベッドで仲良く寝ることを「添い寝」と呼ぶことがあります。あくまでも「一緒に寝るほど仲が良い」という意味ですが、派生的に、わずかながらも性的関係のニュアンスが含まれる場合があります。
「同衾」の英語表現
「同衾」を英語で言う場合は、以下のような表現が適しています。
- bed down with~
- sleep together
- go to bed with~
英語圏でも性行為などの直接的な表現を避け、「同じベッドで寝る」「一緒に眠る」など、それとなく言いまわす文化は日本と共通であることがうかがえますね。
用例
- Last night, I went to bed with her.(昨晩、私は彼女と同衾した)
「同衾」のまとめ
中国の有名な思想家「孔子(こうし)」が残した言葉に、「男女七歳にして席を同じうせず」というものがあります。
男子と女子は、七歳ともなればお互いの異なる性を自覚し、同じ席(ここでは、敷物のこと。寝床の意もある)に座るべきではなく、食事も別にすべきという、性の乱れを厳しく戒める儒教の教えです。
この教えに基づけば、「男女七歳にして同衾せず」とも言えるかもしれません。いささか厳しすぎる感もありますが、若者の性の乱れが問題となることも多い昨今、「同衾」することの責任を知ることは、年齢に関わらず重要といえるかもしれませんね。