「一辺倒」とは?
「一辺倒」の読み方
「一辺倒」の読み方は「いっぺんとう」です。「いちへんとう」や「いっぺんどう」ではありません。アクセントは「ぺ」につけます。
「一辺倒」の意味
「一辺倒」とは特定のことに偏っていること。いってしまえば偏愛です。ごくごく一部のことだけが大事で、他のことはどうでもいいと顧みないくらい入れ込んだ様子ですね。
「一辺倒」の「一」は一部のこと、「倒」は傾倒すること、と考えると意味がつかみやすいのではないでしょうか。ただし、「辺」を「偏」とうっかり書いてしまわないように注意しましょう。
「一辺倒」は、他に選択肢はいくつもあるけれど、選ぶのはこれだけ、といったことを指します。他に選ぶものがないから仕方なく選ぶというよりは、好きだからこれにする、という嗜好や主義主張の問題です。
「一辺倒」の使い方
「一辺倒」は趣味や政治に関して使われることが多い言葉です。他のことには見向きもせず、ただそれだけを追求する偏った好みや考え方を表します。
政治政策や企業戦略の場合には批判的な意味であることもあります。趣味の場合は個人的な問題ですので、それだけ好んでいるという程度や範囲の説明であることが多いです。
「一辺倒」は名詞です。「一辺倒の」「一辺倒な」「一辺倒だ」という形で使うことがほとんどです。
使用例
- 「お世話になったから、叔父さんにウイスキーを送ろうと思うんだ。」「あの人はウイスキーが好きだけど、バーボン一辺倒よ。スコッチは飲まないんじゃないかしら。」
- アメリカ一辺倒の政策で、アジアの国との交流がおろそかになっている。
- アウトドア一辺倒な製品開発が続いている。先月の売り上げも悲惨だったが、利益回収はできるのだろうか。
「一辺倒」の由来
「一辺倒」は中国由来の言葉です。朱子学の開祖、朱熹(しゅき)の著作『禁思録』まで遡れるようです。当時は儒教の入門書として好まれたそう。
この言葉は第二次世界大戦の後、日本で流行します。その原因は朱熹ではなく、毛沢東(もうたくとう)。彼が書いた論文に使われていたことがきっかけで、日本の政治家も好んで使うようになり、それが一般人まで広がったとも言われています。
「一辺倒」の類語
一心不乱
何か一つのことに集中するという意味の言葉は数多くあります。しかし、「一辺倒」のように他のものなど眼中にない、歯牙にもかけないという態度はさほど多くはありません。
その一つが「一心不乱」です。ただ一つのことに集中し、他のことに心を乱されないという意味です。元は仏教の言葉ですが、宗教的な意味でなくとも使えます。また、「一辺倒」と違い、批判的な使い方をしません。
同じ意味の言葉に、「一意専心」や「一本やり」などがあります。大きな違いはないので、好みで使い分けましょう。
傾倒
「一辺倒」と同じように「倒」の字を使った類語に「傾倒」があります。何かに心を奪われ、夢中になっている様子を表す言葉です。人に対しては「心酔」を使う場合が多いようですが、主義主張に対しては「傾倒」が好まれます。
「傾倒」は単純に尊敬していることにも使いますが、熱に浮かされているように理性を失い、偏っていることにも使います。
「通り一辺倒」とは?
「通り一辺倒」は、「一辺倒」と「通り一遍」から生まれたとされる言葉です。新語や造語の類であるとも、誤用であるとも言われ、物議をかもしています。
「通り一辺倒」は、形だけの、ありきたりな、マニュアル通りといった意味で使われているようです。
通り一遍
「通り一遍」には2つの意味があります。1つ目は通ったついでに立ち寄っただけ。行きつけではないお店に行くことに使います。「一見さん(いちげんさん)」や「振りの客(ふりのきゃく)」を「通り一遍の客」と言います。
もう1つはうわべだけで中身が伴っていないこと。誠意がなく、本気とは思えないという意味です。謝る時に「気持ちがこもっていない」と言われた経験がありませんか?そういった形だけの謝罪や挨拶のことです。