「怯懦」とは?
読み方
「怯懦」の読み方は「きょうだ」です。強く打ち付ける「強打」と同じです。アクセントも同じく頭高型で、「きょうだ」とつけます。
意味
「怯懦」の意味は気が弱いこと、臆病なことです。勇気がなくて、何か怖いことがあるとすぐに逃げ出したくなる、不安に感じやすい様子を表します。
別の言葉で言い換えるなら「怖がり」や「小心者」です。若者言葉なら「ビビり」、ネットスラングなら「チキン」が近いですね。
知名度の低い文章語なので、会話文で使われることはありません。説明文やレポートの類でも見られません。近代の文学作品などでまれに用いられる程度です。
「怯懦」の使い方
「怯懦」は名詞や形容詞としての用法が多い言葉です。意気地なしな性格を「怯懦な性格」と呼んだり、臆病者を「怯懦者」と言ったりします。
ほとんどの場合、「怯懦」は「臆病」で置き換えることができます。「臆病」よりも知名度が低いため、いわゆる手あかのついた表現を避けたいとき、なじみのない言葉で印象付けたいとき、親しみを排除したいときに好まれます。
近年では「怯懦を退ける」や「怯懦を切り捨て」という形で使われることも見られます。これらは松下幸之助さんの座右の銘やインターネットゲームで使用されていたことから広まったものと言われています。
使用例
- 土壇場になって逃げだしたくなる、自分の怯懦な心を叱り飛ばした。
- どうやら彼は、逃げて生き延びるような怯懦者になるくらいなら武士らしく戦って死のうと考えているようだ。
- しかしそれは、生きて恥をかくことから逃げたということであり、怯懦に他ならない。
「怯懦」の由来
「怯」と「懦」はどちらも意気地なしの弱い心を表しています。同じような意味の漢字を重ねた言葉、と言えるかもしれませんね。
「怯」は心を表すりっしんべんに、「去」です。「去」の意味は離れていくこと、逃げ出すことです。いなくなりたいと思う心、つまりは尻込みしたり恐れたりすることになります。
「懦」もりっしんべんのつく漢字です。そこに「需」を加えます。「需」は雨ごいをする巫女の意味で、様子をうかがいながら待っていることを表しています。受け身の姿勢なので弱い心、ということですね。
「怯懦」の類語
甲斐性なし
「甲斐性(かいしょう)」とは何かをやりとげようという強い気持ちです。努力や根性、成果とも言えます。「甲斐性なし」はそういったものがないので、頼りにならない意気地なしのことです。
「不甲斐ない」「生き甲斐」「甲斐甲斐しく」と使われるこの「甲斐」ですが、由来はわかっていません。武田信玄が率いた甲斐の国の武士に由来するとも言われますが、平安時代の『伊勢物語』にも「かひなし」とあるので、当て字と考えられています。
弱虫
「怯懦」の類語のうち、会話でも使われるカジュアルなものが「弱虫」です。ご存じのように気が弱い臆病者という意味ですね。「泣き虫」とともに悪口として使われます。
ところで、なぜ「虫」を使うのでしょうか?一説では、人間に簡単に退治される非力な存在だからのようです。「蚤(のみ)の心臓」や「虫の息」というように弱者の代表例とされていたそう。「本の虫」が紙に穴が開くくらい読んでいるのとは別ですね。
チキン
英語のスラングでいえば、「怯懦」は「チキン(chicken)」と通じるものがあります。「チキン」は臆病な態度や性格をあざける悪口です。日本のネットスラングでは「チキる」と動詞化されていました。