「おみあし」とは
「おみあし」とは、敬う相手の「足」をさす言葉です。例えば、「お客様のおみあしを…」というように表現します。
「足」を丁寧に言う表現ですが、「おあし」とは言いません。後述しますが、「おあし」という言葉には「足」とは全く異なる意味があるからです。
もともとは女性特有の言い回し
「おみあし」という言い方は、もともとは‘女性語‘と言われる女性特有の言い回しでした。しかし、現代では言葉そのものに性差はなく、男性であっても「おみあし」という表現を使うようになってきています。
「おみあし」を用いた例文
- お嬢様のおみあしにあう靴を、色々と取り揃えております。
- 長旅でお疲れでしょう。どうぞ、おみあしを楽になさってください。
- お客様のおみあしは長くていらっしゃいますので、裾上げは必要ないかと思います。
「御」の持つ意味
「おみあし」は漢字では「御御足」と書きます。「お(御)」も「み(御)」も接頭語で、主に和語に付いて尊敬語を形成します。有名どころでは「御御御付(おみおつけ)=味噌汁」という言葉もあります。
しかし、同じ「御」の字でありながら、「お」と「み」の読みが存在するのはなぜなのでしょうか。
「み(御)」とは
古くから使われている「御」の読み方は「み」です。「み」とは、神仏、天皇、貴人などに属するものであることを示す接頭語です。
例えば、祭りの時に担ぐ「みこし」という言葉があります。この「みこし」ですが、古くは主に天皇の乗り物の総称を「こし(輿)」といい、尊敬の接頭語を付けて「みこし(御輿)」と呼びました。
祭礼においては、「こし」は神体・神霊が乗るものという意味から「みこし」に「神」の字をあてて「神輿」と表しました。今でも祭りの「みこし」は「神輿」と表記するのが一般的です。
さらに丁寧語を付けて「御神輿(おみこし)」と表記することもあります。その場合でも、「御御輿」と書いても間違いではありません。
「お(御)」とは
「御」を「お」と読むのは、「おほみ(大御)」から転じたものです。「おほみ」とは神や天皇に関係するものへの尊敬の接頭語「み」の中で、最も重い敬意を表すものです。
その「おほみ」が転じて「おん」となり、その後「お」と読まれるようになりました。
なぜ「おみあし」か
相手を敬い足に「御」を付けるということであれば、「おあし(御足)」でも良いわけです。しかし「おあし」ではなく「おみあし」という言葉になったのはなぜでしょうか。
「おあし」は「銭」
その理由は「おあし」という言葉の意味にあります。「おあし」は、古語で「銭」をさす言葉です。一説には、お金は足が生えたように勝手に出入りしてしまうことが由来とされています。
したがって、人に対して「おあし」を使えば、「あなたのお金」という意味になってしまいます。
「みあし」の丁寧語が「おみあし」
では「みあし」ではどうでしょう。実は、相手の足を敬う言葉には「みあし」もあります。神や天皇の足を「みあし」と呼ぶほか、貴人の足をさすることを「みあしまゐり(御足参り)」と言います。
つまり「おみあし」とは敬う相手の足、つまり「みあし」のこと。さらに「おみこし(御御輿)」と同じく、「みあし」に丁寧語をつけて「おみあし(御御足)」となったのです。