「辛辣」の意味
「辛辣」は「しんらつ」と読み、大きく分けて二つの意味をもつ言葉です。一つ目は、味がきわめて辛い、という意味です。
この辛さは、辣油(ラー油)に「辣」の字が用いられていることからも分かるように、舌がひりひりとするような辛さです。現代の日本語では、この意味での用法はほぼ見られません。
二つ目は、言葉や態度、表現などがきわめて手厳しいことや、そのさまを意味します。「辛口なご意見」などという表現がありますが、それよりもかなり強い感じを受ける言葉です。
「辛辣」な態度を他者にとる場合、そこに怒りや悪意があることはままありますが、なかには、相手のためを思って、あえて手厳しいことを包み隠さずに告げているケースもあります。
このようなニュアンスも持つため、「辛辣」は、単なる悪意やいじめ、怒りなどの感情とは異なることは留意すべき点です。
「辛辣」の使い方
「辛辣」の使い方を、味覚における表現も含めてご紹介します。味の「辛辣」は、辛みがある、というレベルを超えた辛さです。
例文に登場する「四川料理」は、中国四川省の郷土料理を意味します。香辛料を多用し、激烈な辛みをきかせる味付けが有名ですね。
手厳しい態度や言葉という意味での「辛辣」の例文には、相手への悪意や怒りがこもっている場合と、相手のためを考え、あえて手厳しい言葉を発している場合の二種類を挙げています。
(A男)
先月、中国の四川省に出張したとき、本場四川料理の麻婆豆腐に挑戦したんだ。あまりに辛辣な味に、しばらく舌がしびれたままだったよ。
(B子)
クラスメイトの由美は、以前、私の彼のことが好きだったそうなの。私のやることなすことに彼女が辛辣な言葉を投げつけてくる理由が、ようやく判ったわ。
(C子)
同居の姑の私への態度が辛辣きわまりないの。姑との別居が不可能なら、本気で夫との離婚も考えるわ。
(D課長)
部下の鈴木君は、発想力はあるんだが、詳細を詰められない粗さがあまりに目立つ。今回彼が提出した企画書に対しては、あえて辛辣な意見ばかりを述べてみた。彼がどう成長するかが楽しみだ。
「辛辣」の類語と使い方
味覚の方の「辛辣」の類語としては、「舌がしびれるような味」や「激辛」などが挙げられますが、こちらについての説明は不要でしょう。今回は、「態度などが手厳しい」方に絞って類語とその使い方をご紹介します。
痛烈(つうれつ)
「痛烈」とは、きわめて激しく、手厳しく責めたてること、また、そのさま、を表す言葉です。
- 参院選に出馬表明した俳優の田中氏だが、かつて反社会勢力とつながりがあったことを週刊誌に報道され、国民から痛烈な批判を浴びて、立候補を断念した。
- 三遊間を襲う痛烈な打球でしたが、名手田中選手は見事にキャッチ。これはファインプレーです。
苛辣(からつ)
批判や態度などがきわめて厳しく激しいさまを表す言葉に、「苛辣」があります。強い敵意や憎悪を生じるさまを表現する言葉ですから、辛辣よりも感情的な感じがする言葉です。
- 旧日本軍においては、上官の一般兵への叱責や指導は苛辣をきわめた。
- 検察官の苛辣な取調べに、強情な犯人もついに罪を認めた。
峻厳(しゅんげん)
「峻厳」には、きわめて厳しく、いかめしいことという意味があります。山などが高く険しいことを表す言葉でもありますが、こちらのほうは「痛烈」の類語ではありません。
- 私の祖父は、長く私立高校の校長を務めた人物だったが、その峻厳な人格には近寄りがたいものがあり、孫として甘えた記憶はない。
「辛辣」の英語表現
「辛辣」の英語表現にはさまざまな例があります。そのなかから二つを挙げてみます。
harshness:態度や表現の厳しさ、荒々しさ、辛辣さを意味する名詞。
【文例:Mary was frightened by his attitude of harshness.】
【訳:メリーは、彼の態度の辛辣さに怯えた】
bite:おもに、冗談や文章、コメントなど、言葉における鋭さ、辛辣さを意味する名詞。
【文例:The bite of his speech was really sharp.】
【訳:彼のスピーチは、実に辛辣だった。】