「レイシストの意味と使い方
レイシストは、「人種差別主義者」を意味する言葉です。人種を表す英語”race"から、まず「人種主義」を意味する”racism"(レイシズム)という言葉が派生しました。
その後、人種主義を実践し、人種を差別する言動をとる人のことをレイシストと呼ぶようになりました。
「レイシスト」の定義
人種差別撤廃条約では、「レイシスト」は人種・民族的出身にもとづく差別を行う者と定義されています。
社会学者ロバート・マイルズは、レイシストとは肌の色などいくつかの特徴を重要な基準として選び、それによって人間集団をカテゴライズし、否定的な評価をくだして排除・包摂していくイデオロギーであり、血統など生まれつきの事象も含まれる、としています。
また、レイシストという言葉は、人間に対してだけではなく、人種を差別する組織・制度にも適用されます。
「レイシスト」の使い方
- あのホテルのオーナーは、有色人種は絶対に雇わない強硬なレイシストだよ。
- 両親が、黒人の彼との結婚を許さないの。自分の親がレイシストだったなんてショックよ。
「レイシスト」の歴史
人種差別の歴史を振り返ると、世界的に激しさを増していくのは、15世紀半ばの大航海時代の幕開けによります。ヨーロッパ人が、大航海によって見出した土地や民族を略奪し、のちには世界の様々な国や集団を植民地とするなかで、凄まじい差別が始まったのです。
そこには、差別どころか、人間を家畜同然に扱う奴隷制度も含まれています。わけても新大陸(大航海により発見された、南北アメリカ、オーストラリアの大陸)での奴隷の歴史は悲惨きわまりないものでした。
奴隷の歴史
新大陸を発見したヨーロッパ人は、原住民を迫害、殺戮しつつ、新天地の開拓や産業の振興のために、おもにアフリカの黒人を奴隷として労働力にしました。
19世紀末までは、アフリカの国や部族同士の争いが盛んで、勝った側が負けた側の人間を、奴隷としてヨーロッパ人に売りさばきました。家畜のように奴隷船で新大陸へ輸送される過程は過酷で、ここで命を落とす人々も多数いたといいます。
19世紀末以降は、ヨーロッパ列強がアフリカの大半を植民地支配し、奴隷の売買はいっそうさかんになりました。奴隷市場で商品として売られ、過酷な労働を強いられる人々の状況は悲惨きわまりないものです。小説「アンクル・トムの小屋」(ストウ夫人著)を子供の頃に読み、奴隷制度に衝撃を受けた人は多いのではないでしょうか。
奴隷制度は、南北戦争後、アメリカの1865年の憲法改定、および1888年のブラジルの制度廃止によって終結しました。しかし、今なお黒人への差別が続いていることは、報道などでご承知のとおりです。
ナチスのユダヤ人迫害
1933年~1945年、ナチス・ドイツを率いたヒトラーは、歴史に残るレイシストの一人です。支配人種であるドイツ民族をさまたげるユダヤ民族は壊滅されるべき、という過激思想のもと、ユダヤ人狩りを行い、強制収容所での過酷労働や虐殺により、推定600万人の命を奪いました。
「レイシスト」による法律や団体
- ジム・クロウ法:アメリカで1976年~1964年まで存続した、有色人種隔離目的の法律・政策。バスの座席やプール、飲食店の席、学校などが白人と有色人種で分けられる例など多数。
- クー・クラックス・クラン(KKK):アメリカで1865年に結成され、今なお存続する強硬なレイシスト団体。WASP(プロテスタントのアングロサクソン)などの北方系白人は他の人種にまさる神に選ばれた民、という白人至上主義をとる。
「レイシスト」まとめ
1969年、国際連合により「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」が発効されました。しかし、世界でレイシストの活動はなおさかんです。日本でも、ネットを中心にあからさまな人種差別発言がみられ、ヘイトスピーチなども耳にします。
反面「ワンネス」を目指す動きも、大きなうねりをみせています。どちらが真の平和な世界に続く道かは、明らかですね。