「武者震い」とは?
「武者震い」の意味
「武者震い(むしゃぶるい)」とは、「戦いや重大事に臨んだ際に、心が奮い立って体が小刻みにふるえる様子」を表す言葉で、「武者震いする」という動詞として用いられます。また、「武者振るい」と表記されることもあります。
「武者」の意味
「武者(むしゃ/むさ)」とは、「武芸をもって主人に仕え、戦いに従事する人」、「武士」、「つわもの」、「もののふ」を表す言葉です。
また、武士の詰所を指す「武者所(むしゃどころ)」の略、端午の節句に飾る「武者人形(むしゃにんぎょう)」の略としても用いられます。
「武者震い」の使い方
一般的に、「武者震いがする」は話し手自身の状態を表しますが、「武者震いをする」は、話し手以外の人の状態を表す時に用います。
- スタートラインに立つと、(私は)武者震いがした。
- スタートラインに立つと、彼女は武者震いをした。
一方「武者震いする」は、「武者震いがする」という場合にも、「武者震いをする」という場合にも使うことができます。
- 私は武者震い(が)して勇み立った。
- 彼女は武者震い(を)して勇み立った。
「武者震い」の類語
「武者震い」の類語としては、「体が緊張や感動などによって無意識に小刻みに動くこと」を表す、次のような言葉が挙げられます。
- 「身震い(する)」:恐怖、緊張、感動のために体が震えること。
- 「戦慄(する)」:恐怖のために体が震えること。
「武者震い」の科学的メカニズム
「武者震い」は心因性発熱
体が自然に震える現象は発熱と関係がありますが、「武者震い」は、風邪を引いた時の震えのメカニズムとは異なります。
ラットを使った実験では、命の危険にさらされるなど、闘争か逃走しかない状況での急性ストレス反応によって、体温が平熱よりも上昇するというデータがあるそうです。これは、体温を上昇させて体の動きを最大限にまで高めようとする、生存をかけた現象と解釈されています。
発熱のメカニズム①ホルモン系
動物の場合は、「立毛筋(りつもうきん)」を収縮させて毛を逆立たせ、空気の層を作って放熱を防ぐことで、体温を上昇させます。
体毛が少ない人間の場合は、「骨格筋」を震えさせることで発熱し、身体のパフォーマンスを向上させます。
骨格筋による体温上昇は、脳が分泌した「甲状腺刺激ホルモン」が甲状腺に、「副腎皮質刺激ホルモン」が副腎皮質に作用して、それぞれが分泌した「チロシン」、「糖質コルチコイド」が骨格筋や肝臓に作用し、代謝を上げることで起こります。
発熱のメカニズム②神経系
「アドレナリン」は神経伝達物質のひとつで、興奮や緊張などによって、副交感神経よりも交感神経が優位になった時に副腎髄質から分泌されます。心拍数の上昇、血糖値の上昇、瞳孔の散大などの作用がある物質です。
ストレス反応の中心的役割を果たすので、動物が命の危機に陥った際にも、闘争か逃走を実行するために分泌されます。アドレナリンが拍動を促進することによって体温も上昇するので、ストレス環境下での発熱にも関わりがあるでしょう。
「武者」を含む言葉
「武者修行」
「武者修行(むしゃしゅぎょう)」とは、武術の修行の一つで、「武士が武芸の修行のために諸国を巡って歩くこと」を表す言葉です。転じて、「学問や技芸の修行のため、よその土地や外国へ行くこと」を指すことがあります。
「武者修行」は、諸国を巡って名のある使い手や道場を訪ねて修練や試合をするもので、戦国末期〜江戸初期、および幕末に流行しました。
修行以外にも、空腹・疲労・寒暑などの困苦を克服するという精神鍛錬や、士官の口を探したり、自分の流派の宣伝や勢力拡大するという実務的な目的もあったようです。
「落武者」
「落武者(おちむしゃ)」とは、「戦いに負けて逃げて行く武者」を指す言葉で、「落ち武者」と表記することもあります。この意味のほかに、「落ちぶれた敗者」を比喩する言葉として用いることもあります。
「我武者・我武者羅」
「我武者(がむしゃ)」または「我武者羅(がむしゃら)」とは、「見境がなく乱暴なこと」、「向こう見ずなこと」、「後先を考えないで強引に事をなすこと」を指す言葉で、そのような様子、または、そのような人を表す時に使用します。