方便の意味
ことわざ「嘘も方便(うそもほうべん)」でおなじみの「方便(ほうべん)」。この言葉の意味は、目的のために仮にとる手段です。本来の目的が別にあるけれど、直接その目的を追いかけても達成できそうにもない。むしろ他の目的を挟んだ方が上手くいく。そんな時に用いられる手段が「方便」です。
また、「方便」には都合がいいという意味もあります。タイミングがいい、うまくいくという意味よりも虫がいいという意味で使われることが多く見られます。
この「方便」は元々仏教用語で、仏教では人々を悟りに導くために用いる仮の方法という意味です。仏教では加行(けぎょう)という儀式に先立って行われる修行のことを指すようです。
方便の由来
一般的な意味での「方便」は仏教で使われた言葉がもとになっています。仏教用語としての「方便」はさらにサンスクリット語に由来します。サンスクリット語の「upaya」という言葉です。近づく、到達するという意味があります。悟りに近づくための方法、ということですね。
方便の使い方
- テストで100点を取るたびにご褒美を挙げるのは良いことではないが、成績が上がるなら方便としては悪くない。
- あれほど酒好きだというのに、残業があるから宴会には来ないという。上司がいるからきたくないのだろう。全く御方便なものだ。
- 目的のためなら手段は選んではいられない。嘘も方便だ。
方便の英語訳
「方便」は英語では「expedient」が使われます。急場しのぎの方法やご都合主義という意味があります。いつも正しいわけではないけれど時には必要になる方法です。
その他、「makeshift」という語もあります。間に合わせ、一時しのぎという意味です。こちらはより一時しのぎの意味合いが強い言葉です。
純粋に方法という意味であれば「means」や「ways」になります。結果に対する手段といった意味合いが強くなります。
嘘も方便の意味
「嘘も方便」とは、嘘をつくこと自体は決して良いことではないが、時と場合によっては必要になるという意味です。それで物事が円滑になるなら仕方ない、必要悪ということですね。
この「嘘も方便」も仏教由来といわれています。開祖のブッダが民衆に説法をおこなう時に嘘を用いたという逸話があるそうです。結果を出すには臨機応変さが必要という認識だったようです。
「嘘も方便」は英語で「It is sometimes necessary to lie」となります。そのまま、嘘をつくことも時には必要になるという意味ですね。
その他の仏教由来の言葉
実は「方便」以外にも仏教由来の言葉は多くあります。有名なものをいくつかご紹介しましょう。
諦める
「諦める(あきらめる)」は実は仏教由来の言葉です。『般若心経』にも漢字だけなら出てきますよね。「羯諦羯諦(ぎゃていぎゃてい)」と。
現在では夢や希望がかなわないと断念するという意味ですが、元になった仏教用語では少々趣が異なります。仏教用語では明らかにする、道理をわきまえるという意味です。ただ断念するのではなく、願いがかなわない理由をはっきりさせてどうしようもないと納得してあきらめる。だから悔いが残らない。これが本来の「諦める」です。
挨拶
「挨拶」は元々は「一挨一拶」といい、禅問答を交わすことを指しました。禅問答とは悟りを得るためにおこなわれる師弟間の問答です。現在では禅問答以外の一般的な問答ややり取りにも使われますね。
迷惑
「迷惑」もまた仏教用語でした。本来は悟りを得られずに戸惑い、途方に暮れるという意味で使われていました。しだいに困惑するという意味合いが強くなり、現在の用法になったといわれています。