「辛苦」とは？意味や使い方をご紹介

まず「辛苦」は、「しんく」と読みます。昔は「しんぐ」と読まれていましたが、現代では「しんく」が一般的です。

「辛」の字は訓読みで、「から（い）」と読みます。「つら（い）」という表記も多く見かけますが、実は「つら（い）」は表外の読み方です。一方で「苦」の字は訓読みで、「くる（しい）」や「にが（い）」と読みます。

「辛苦」には、以下の通り二つの意味があります。

まず一つ目は、つらい目に合って苦しむことや、その苦しみ、生活や仕事上での苦労、辛酸、苦心のことです。「辛」が表外読みの「つらい」を表しているわけですね。

ちなみに「つらい」とは、耐えがたい苦しさのことです。一方の「苦しい」とは心の圧迫、つらいことを表します。

つまり「つらい」と「苦しい」はお互いがお互いの意味を含んでいる、関わり合いが深い言葉なんですね。

「辛苦」の意味の二つ目は、からくて苦い味のことです。ただしどちらかと言えば一般的には、一つ目の意味を示すことが多いでしょう。読み物などでは、こちらを意味することもあるかもしれません。

上述を踏まえて一つ目の意味での使い方ですが、「辛苦」はつらく苦しいことを指して使われ、サ行変格活用されることが多めです。簡単に言えば、「して」や「する」と組み合わせて動詞として使われる場合が多い、ということです。

たとえば山に登っていて、「辛苦して頂上に辿り着いた」と使えば、「つらく苦しい思いをして、頂上に辿り着いた」と伝わります。また「子育てに辛苦する」だと、「子供を育てるにあたり、苦労が多い」というような意味です。

「して」や「する」以外なら、「辛苦せざるを得ない」などの使い方もあります。これは「つらい目に合わないわけにはいかない、やむを得ず苦しい思いをする」といったことです。もちろん名詞として、「辛苦を経て～」という風にも使えます。

「辛苦」を片仮名で「シンク」と表記する場合、別の意味で伝わりやすいので、気をつけましょう。「シンク」とは一般的に、台所の流す部分、水槽を示します。

他には同時性を表す「シンクロニシティ」という言葉や、水泳で「シンクロナイズドスイミング（現アーティスティックスイミング）」という競技などもありますね。

「辛苦」を含む四字熟語としては、「艱難辛苦」や「粒粒辛苦」が挙げられます。

「艱難辛苦」は「かんなんしんく」と読み、困難に遭って苦しんだり悩むことや、人生でぶつかる苦労を表します。「艱難」とは、苦しみ悩むことや、難儀のことです。

つまり「艱難辛苦」は似た意味の言葉を組み合わせることで、苦しみを強調しているわけですね。よって苦しみの程度は強めなニュアンスです。この言葉は「艱難辛苦を乗り越える」という風に使われます。

「粒粒辛苦」は「りゅうりゅうしんく」と読み、穀物の一粒一粒は、農民が苦労や努力を重ねた結果、実ったものという意味です。そこから転じて、コツコツと苦労や努力を重ねることを表します。

こちらは別の意味の言葉の組み合わせで、「辛苦」とは少し違っていますね。苦しみも表すのですが、どちらかと言えば「その積み重ね」のニュアンスが強めかもしれません。

ちなみにこの言葉の由来は古文の「粒粒皆辛苦」という、農民の苦労を表す一文です。また「粒々辛苦」と書く場合もありますが、意味は同じです。

「辛苦」に関連する四字熟語には、「千辛万苦」や「苦心惨憺」などがあります。

「千辛万苦」は「せんしんばんく」と読み、色んな苦難や、その苦難を経験することを表します。千や万の字は数が多いことを表すので、引いては「辛苦」が千も万もある、というような意味です。

「苦心惨憺」は「くしんさんたん」と読み、あれこれと苦労を重ね、努力や工夫することや、その様子を表します。この言葉の意味にも苦労が入っていますが、どちらかと言えば「苦心惨憺」は、「色々と悩んでやってみる」というようなニュアンスです。