「艱難辛苦」の読み方と意味
「艱難辛苦」という四字熟語は「かんなんしんく」と読みます。これは「艱難(かんなん)」と「辛苦(しんく)」という二つの言葉が連なってつくられています。
「艱難」の「艱」という漢字は「かたい、むずかしい、苦しむ」といった意味を示します。「難」も同様に「むずかしい、苦しみ、わざわい」といった意味合いですので、同じような内容の漢字が重なった言葉となっています。
「辛苦」もその字の通り、「つらく苦しいさま」を表す熟語です。すなわち「艱難辛苦」は、「非常な困難に直面して、苦しみ悩むこと」といった意味を示します。
同じような意味を持つ二つの言葉を並べることで、そのニュアンスをより強調している四字熟語がこの「艱難辛苦」です。これは古典など何らかの書物や故事からの成語というより、漢語の素養を基につくられた重厚な日本語表現といえるでしょう。
「艱難辛苦」の使い方
「艱難辛苦」は前述のように、古い時代に漢語の表現を基につくられた熟語ですので、かなり硬い文章語だといえます。明治時代などの文学作品にもしばしば登場し、古くは「かんなんしんぐ」とも読んだようです。
このため、「艱難辛苦」を現代の日常会話やSNS、ビジネスシーンなどで一般的に使用することはまれです。目にしたり、使用するケースがあるとしても、小説や日記、論説といったやや硬派な文章の中でや、式典などで述べる重厚な挨拶文などで用いられる場合がもっぱらでしょう。
「艱難辛苦」の例文
・今回の会社再建までの道のりは、まさに艱難辛苦の連続だった。
・彼は、これまで艱難辛苦を共にしてきた盟友だ。
・先生がこのたびめでたく大賞に輝かれたのは、長年の艱難辛苦を乗り越えたからこその金字塔といえましょう。
「艱難辛苦」の類語
「艱難辛苦」は難しい四字熟語ですが、類似する熟語表現には多くの種類があります。次項でご紹介するように、英語圏でも似た言い方は多いようです。苦難との闘いは人類普遍のテーマということなのでしょうか。いくつか事例をご紹介しましょう。
・「四苦八苦(しくはっく)」非常に苦労すること
・「焦心苦慮(しょうしんくりょ)」…あれこれ思い巡らせ悩むこと
・「粒々辛苦(りゅうりゅうしんく)」…細かな努力を重ねて苦労すること
・「千辛万苦(せんしんばんく)」…辛苦が千も万もあるさま
・「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」…将来の成功を期して耐えること
・「刻苦勉励(こっくべんれい)」…心身を苦しめて勉学や仕事に励むこと
・「苦心惨憺(くしんさんたん)」…非常な苦労をして工夫を重ねること
「艱難辛苦」にまつわることわざや英語表現
「艱難辛苦」という熟語にまつわる慣用的な表現に、「艱難汝を玉にす(かんなん なんじをたまにす)」ということわざがあります。「艱難辛苦汝を玉にす」と書いた文を目にすることもありますが、一般的には前者が用いられているようです。
このことわざは「苦労や困難を乗り越えてこそ、立派な人物になれる」といった教訓を表すものです。ただ日本古来のことわざではなく、英語など西洋のことわざを明治時代に漢文調に意訳したものだとされています。
元となったことわざは「Adversity makes a man wise,not rich.」(逆境は人を富ませることはないが、賢くする)だといわれます。「Adversity(逆境)」という言葉にちなむ英語の表現も、日本語同様多くの種類があり、古くは英国の劇作家シェークスピアの戯曲にも見ることができます。
それは「Sweet are the uses of adversity.」です。これはシェークスピアの作品「お気に召すまま」の中で、弟に地位を追われて森で暮らす元公爵が語る言葉です。「逆境から得られる経験は甘美なものだ」といった日本語訳がされています。