「恐悦」の意味
「恐悦(きょうえつ)」という名詞には次の2つの意味があります。
- (相手の好意などを)畏まって喜ぶこと。
- 非常に喜ぶこと。
上記の2通りの意味は、「恐ろしい」という言葉の使い方によって生まれる違いです。
- 「慎む、畏る」という意味で使う場合→1、
- 「程度が並外れている」という意味で使う場合→2
「恐悦」は「恭悦」と表記することもあり、「恐悦する」という動詞としても使われます。
「恐悦」の用例
恐悦:畏まって喜ぶ
次の引用は、中里介山・作の幕末を舞台とした長編時代小説『大菩薩峠 禹門三級の巻』の一節です。
薩摩寄りの人間で、関東でことを起こそうとしている「南条力」は、盗賊の「がんりきの百蔵」に盗みの仕事を言いつけます。「がんりき」が嬉しさのあまり、平身低頭しながら感謝を述べるシーンで「恐悦」が使われています。
「先生、がんりきを見込んでそうおっしゃって下さるのが有難え」
がんりきは、額を打って恐悦しました。
恐悦:非常に喜ぶ
次の引用は、夏目漱石・作『坊ちゃん』の一節です。教頭の「赤シャツ」によって左遷させられる「うらなり」の送別会で、会場に芸者がやってきて無礼講の状態になった場面の描写です。「赤シャツ」の腰巾着の「野だいこ(野だ)」もだいぶ楽しんでいます。
おきなはれやと芸者は平手で野だの膝ひざを叩いたら野だは恐悦して笑ってる。この芸者は赤シャツに挨拶をした奴だ。芸者に叩かれて笑うなんて、野だもおめでたい者だ。
「よろこぶ」を表す漢字
「悦ぶ」
「恐悦」の「悦」は、「心が叶ってうれしく思う」という意味です。計画通りに行った、願いが叶ったという場合に使用するので、「恐悦」も念願叶った嬉しさというニュアンスを含みます。
- 使用例:「作戦の成功を悦ぶ。」
「悦」を含む単語には次のようなものがあります。
- 「悦楽(えつらく)」:よろこび楽しむこと、よろこびで心が満たされている状態
- 「喜悦(きえつ)」:心からよろこぶこと
- 「愉悦(ゆえつ)」:心から愉快に思ってよろこぶこと
「喜ぶ」
「喜ぶ」は、「嬉しいと感じる」という意味で、一番広く用いられる表記です。「よろこぶ」を漢字に変換する際に迷った時には「喜ぶ」を選ぶといいでしょう。
- 使用例:「大学に合格して親も喜んだ。」
「喜」を含む単語には次のようなものがあります。
- 「喜色(きしょく)」:嬉しそうな表情
- 「随喜(ずいき)」:心からよろこび有り難がること、他人の善行を見て心からよろこぶこと
- 「悲喜(ひき)」:悲しみとよろこび
「慶ぶ」
「慶ぶ」は「祝いよろこぶ」という意味なので、儀礼的な場面で使用します。他の「よろこぶ」という漢字に比べて、使用するシーンが限定されていますのでご注意ください。
- 使用例:「新年のお慶びを申し上げます。」
「慶」を含む単語には次のようなものがあります。
- 「慶祝(けいしゅく)」:よろこび祝うこと
- 「慶事(けいじ)」:めでたいこと、祝い事
- 「慶弔(けいちょう)」:祝い事と弔い事
「歓ぶ」
「歓ぶ」は「ワイワイと声をあげてよろこぶ」ことです。声をあげたというニュアンスを含む場合に使用します。使い方に迷ったら、下に挙げた単語を思い出すと分かりやすいでしょう。
- 使用例:「優勝チームを歓んで迎えた。」
「歓」を含む単語には次のようなものがあります。
- 「歓喜(かんき)」:非常によろこぶこと
- 「歓声(かんせい)」:よろこんで上げる大声
- 「歓談(かんだん)」:打ち解けて楽しく話すこと
「欣ぶ」
「欣ぶ」は「息を弾ませてよろこぶ」ことです。嬉しさのあまり走り回ったなどの動作が伴ったというニュアンスで使用します。
- 使用例:「吉報に小躍りして欣んだ。」
「欣」を含む単語には次のようなものがあります。
- 「欣快(きんかい)」:非常に嬉しく、気持ちの良いこと
- 「欣然(きんぜん)」:楽しげに事をする様子
- 「欣喜(きんき)」:非常によろこぶこと
「恐悦」を使った四字熟語
「恐悦至極(きょうえつしごく)」は、この上なく喜んでいることや感謝の気持ちを、畏まりつつ表す言葉です。「恐悦」よりも、極めて喜ばしいという意味が強調されています。