「首尾」の意味
「首尾」は、「首」と「尾」。つまり「初め」と「終わり」を意味します。たとえば、「文の首尾を整える」という場合、文の始めと終わりを整えて合わせることです。
さらに、「初め」から「終わり」まで。つまり、物事の成り行き、結果の意味になります。たとえば、「事の首尾を説明する」というように使います。
この結果がうまくいくように取り計らうことから、 物事をうまく処理することの意味もあります。たとえば、「若い二人の逢瀬を首尾する」のように使います。
以上、①「初め」と「終わり」⓶物事の成り行き、結果③物事をうまく処理すること、の三つが主な意味ですが、古文で、「折り、機会」という意味で使われている例があります。たとえば、『さいわひ只今(ただいま)は人もなく、よき首尾にて候(そうろう)まま/咄本・露が咄(はなしぼん・つゆがはなし)』のように、使われています。
「首尾」の慣用表現
「首尾よく」
「首尾よく」とは、物事の成り行きがうまくいったことを表し、都合よく、うまい具合に、という意味です。たとえば、「迷宮入りと思われた事件が首尾よくかたづいた」のように使います。
同じ意味で使われる言葉として、「 うまく・まんまと・幸いにして・都合の良いことに」などがあります。
「首尾一貫」
「首尾一貫」とは、初めから終わりまで一貫している。つまり、初めから終わりまで一つの方針や態度で貫くことです。たとえば、「彼の主張は首尾一貫している」のように使います。
「首尾一貫」と同じ意味の四字熟語に「終始一貫」があります。ほかには、使用頻度の高い順に、「筋が通る」、「辻褄(つじつま)が合う」、「矛盾しない」、「整合性がある」、「系統立っている」、「ぶれない」などがあります。
対義語としては、一貫性がないという意味で、「二転三転」、「朝令暮改」、「流されやすい」、「ご都合主義」などが使われます。
「上首尾」
「上首尾」とは、物事のなりゆきや結果が良い方向に進んだということを表します。つまり、物事がうまく運ぶことです。たとえば、「この程度完成したら、まず上首尾とすべきだろう」、「上首尾に事が運んで一安心だ」のように使います。
「不首尾」
「不首尾」は「上首尾」の対義語です。たとえば、「最善を尽くしたが、試験は不首尾に終わった」などと使い、「良い結果が得られないこと。不成功」の意味になります。
この意味から派生して、成り行きや結果が思わしくないところから、「評判の悪いこと。不人気」の意味もあります。たとえば、「能力はあるが彼は上司に不首尾だ」のように使います。
「物事の終始が一貫しないこと」の意味もあります。例として、『不首尾ナコトヲ申ス/日葡辞書(にっぽじしょ・日本語をポルトガル語で解説した辞典)』があります。
「上々の首尾」と「首尾は上々」
「上々の首尾」と「首尾は上々」は、物事がうまく運んだ、結果がうまくいったことを意味します。たとえば、「商談は上々の首尾だった」、「不安もあったが、首尾は上々。万事順調でした」のように使います。
「首尾する」
「首尾する」は使用頻度は低いですが、覚えておきましょう。これは、物事をうまい具合に処理することです。たとえば、「お見合いの話がまとまるように首尾する」のように使います。
「首尾の松」とは?
[首尾」の意味の一つに「物事をうまく処理すること」の意味がありましたね。これは男女の情交についても使われます。
この意味に関連して、「首尾」という言葉が使われている松があるので、ここでご紹介します。
「首尾の松」は浅草蔵前に生えている松の名前です。隅田川西岸の川面にさしかかる松で、名前の由来は諸説あります。
その一つに吉原に往来する人たちが隅田川を利用して上り下りする際に、この松の場所で船を停め、遊女との首尾、つまり、遊女との成り行きや結果がうまくいったのかどうかを語り合ったのが由来であるというのがあります。
この松はその後、大風によって倒れたり、枯れてしまったり、関東大震災で燃えてしまったりしたため、元の松から数えて現在の松は7代目だそうです。
「首尾」の英語表現
- Her conduct is consistent.(彼女の行動は首尾一貫している)
- My son has succeeded in entering the school.(息子は首尾よく入学した)
- Everything went smoothly for me.(万事首尾よくいった)
- My examination was a success.(試験は上首尾だった)
- My examination was a failure.(試験は不首尾だった)
- He has done everything for the best.(彼は万事首尾の好いようにはかった)
- He is out of favor with his master.(彼は主人に不首尾だ)
- We managed to meet each other.(私たちは首尾をして会った)
「首尾」まとめ
「首尾」という語はさまざまな文脈の中で意外と多く使われています。なかでも「首尾よく」と「首尾一貫」はどちらもポジティブな意味があるためか、例文を調べると多く使われています。
特に「首尾一貫」が好まれるのは、自分の人生を俯瞰的に見通し、首尾一貫した態度でぶれない生き方をしたいと多くの人が望んでいるためからもしれません。