「君子」とは
「君子」は「くんし」と読みます。教養や人格に優れた立派な人のことを指します。元々は古代中国、で理想的な人格のこととして使われていました。
特に孔子の開いた儒教でよく見られる言葉で、『論語』や『大学』など儒教の文書に見られる文章がことわざとして使われていることも多くあります。
「君子」の類義語
大人
「大人」は「おとな」とも読みますが、「君子」の類義語としては「たいじん」と読みます。どちらも徳のある立派な人を指す言葉です。この意味では「大人」は最近あまり使われません。
「君子」は教養や人徳のある点に注目した呼び方ですが、「大人」は度量や器量などの大きい人であることに注目が置かれています。
聖人
「聖人」はキリスト教などの宗教的意味合いで使われることもありますが、ここでは「君子」同様古代中国起源の意味について説明します。
「聖人」も「君子」と同じく教養ある人格者のことを意味します。「君子」と区別なく使われることも多くあります。
「君子」と区別して「聖人」が使われる場合、「聖人」は孔子や古代中国の尭や舜で理想的な政治を行った王など最も優れた人格のことを指しています。この場合、「君子」は「聖人」に次ぐ人格という意味です。「聖人君子」という言葉通り、「聖人」の方が上ということですね。
「君子」を含むことわざ
君子危うきに近寄らず
「君子危うきに近寄らず」の意味は、「君子は危険な物事には関わらないもの」、つまり「危険なことはするな」ということです。
英語では「A wise man keeps out from danger.」や「Fools rush in where angels fear to tread.」と表されます。
君子は器ならず
「君子は器ならず」は「くんしはきならず」と読みます。「うつわ」とは読みません。意味は「有能な人は一つの才能があるだけでなく、どんなことにも対応できる」です。『論語』由来の言葉です。
「器」はここでは「一つのことには役立つけれど、それ以外の用途がないもののたとえ」として使われています。
昔の中国では、礼儀作法、音楽、弓矢、馬術、読み書き、算数を基本として、さらに医学や政治、戦略など何でも担当できるような修業が求められていました。そのため、一方面の技術に優れるだけでなく、全人格的な教養を身につけよ、という意味で使われます。
このことわざは、英語では「The wise are comprehensive.」と訳されます。
君子は一人を慎む
「君子は一人を慎む」は「自分一人しかいない時にも心正しく言動を慎みなさい」という意味です。こちらは『大学』に由来します。
君子は普段一人でいることから良いことをしています。良いことが習慣になっているので、人と会った時も当たり前のように行動できます。
しかし、徳のない人は普段誰も見ていない時に良いことをしていません。そのため人目がある時に良いことをしようと思っても、正しく行動できず、ぼろが出てしまいます。だから普段から行動を慎みなさい、という戒めの意味で使います。
英語では「A man of virtue behaves properly even when alone.」と訳します。
君子は豹変す
「君子は豹変す」の意味は二つあります。現在では「突然態度や習慣がガラッと変わる」という意味で用いられることが多くあります。しかし、昔は「君子は過ちをすぐに改めて行動する」という意味の言葉でした。
「豹」は動物の豹の毛の模様を指します。そのため「豹変」で「毛変わりで豹のまだら模様が変わるように鮮やかに変わること」という意味です。
英語では、「Wise man are quick to adapt themselves to circumstances.」や「A wise man changes his mind, a fool never.」などが使われます。
まとめ
今回は「君子」について紹介しました。最後に今回紹介した内容をまとめて振り返りましょう。
- 「君子」は「教養と人徳のある人」
- 「君子」に「器量の大きさ」が加わると「大人(たいじん)」
- 「君子」より人格面で完全な人が「聖人」
- 「君子」を含むことわざは儒教由来が多い。