「杞憂」とは?意味や使い方をご紹介

「杞憂」という言葉を、みなさんはご存知ですか?聞いたことがある方は多いかと思いますが、自信をもって書いたり使ったりすることができますでしょうか?ここでは、そんな「杞憂」の意味や使い方を、由来や例文を交えて詳しくご紹介しています。

目次

  1. 「杞憂」の読み方
  2. 「杞憂」の意味
  3. 「杞憂」の由来
  4. 「杞憂」の使い方
  5. 「杞憂」のまとめ

「杞憂」の読み方

「きゆう」と読みます。「杞憂」の「杞」の文字は、【木へん】に部首が【己】のとてもシンプルな成り立ちですが、実は漢字検定一級の難ずかしい漢字です。そして、この「杞」という文字は、ここで使われている中国の古い地名の他に、三種類の落葉木の名前にもなっています。 

また、「杞憂」の「憂」の文字は、優しいという意味の「優」と書くと間違いになりますので、ご注意ください。

「杞憂」の意味

「杞憂」の意味は、心配する必要のないことを心配することです。先ほども触れましたが、「杞」という文字は中国の古い地名を指しています。そして、「憂」の文字は「憂(うれ)う」こと、思い悩んだり心配したりすることを意味しています。

つまり「杞憂」は、「杞」の国の人が「憂」いている様子を表しています。「杞人之憂(きじんのゆう)」とも言います。では、この「杞」の国の人は、いったい何をそんなに心配していたのでしょうか。

「杞憂」の由来

「杞憂」は、古代中国の列子(れっし:『列先生』の意)という人物が作成したと言われている、『列子(れっし)』という書物に収められている話が由来です。

“杞国の人、天地崩墜して身の寄るべき所亡きを憂へ、寝食を廃する者あり。”

この語源となる一文の意味は、「杞の国の人で、天が落ちることや地が崩れることで身の置き所がなくなることを心配し、寝ることも食べることもままならない者がいる」です。

話の終わりに列子は、「天地が崩壊するかしないかを私たちが知ることはできない。同じように生死や過去や未来のことも知ることができない。崩壊しようとしまいと、人は天地と運命を共にしないといけないのだから、考えても仕方のないことに心を砕くのは無駄だ。」と言っています。

この話から人々は、考えても仕方のないことや、心配する必要のないことに思い悩むことを「杞人の憂」、「杞憂」と呼ぶようになりました。

「杞憂」の使い方

「杞憂」の意味がわかったところで、どの様に使うのでしょうか。例文を見てみましょう。
 

「杞憂」の例文

1.新しい学校で友達ができるか心配だったが、「杞憂」だった。
2.宇宙人の襲来なんて、「杞憂」に過ぎない。
3.健康診断の結果がでるまでの悶々と過ごした日々は、「杞憂」に終わった。

文豪が書いた、「杞憂」を使った文

1.“芳賀博士は少し之に付いて「杞憂」を抱いて御出でになる。”(『假名遣意見』:森鴎外)
2.“しかも、林右衛門の「家」を憂うれえるのは、「杞憂」と云えば「杞憂」である。彼はその「杞憂」のために、自分を押込め隠居にしようとした。”(『忠義』:芥川龍之介)
3.“わしは、その気持を、いままで誰にも打ち明けず、自分ひとりの胸に畳んで、おのずから明朗に解決される日を待っていました。「杞憂」であってくれたらいいと、ひそかに念じていたのです。”(『新ハムレット』:太宰治)

※いずれも青空文庫出典

いずれの文でも、「杞憂」は「取り越し苦労」や「余計な心配」といった言葉で置き換えることができます。考えても仕方がないのだけれども、考えずにはいられないようなことに囚われてしまっている状態が、「杞憂」なのです。

「杞憂」のまとめ

いかがでしたでしょうか。「杞憂」の意味や使い方を、ご理解いただけましたでしょうか。古代中国の「杞」の国の人が心配した天変地異ですが、科学技術が発達した現代では、ある程度のことは予測することができるようになりました。

しかし、まだまだ起こってみないと分からないこともたくさんあります。それは、列子が言うように考えても仕方がないことなのかもしれません。ですが、私たちは過去から学び、未来を予測する力を持っているのだから、できる限りの備えをして、「杞憂」を「安心」に変えていきたいものですね。

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