「ワープア」とは?意味や使い方をご紹介

「ワープア」、そんなもの、なりたくてなったんじゃない…、という声も聞こえてきそうです。今や社会問題化している「ワープア」という言葉ですが、どんな背景で使われ始めた言葉なのでしょうか。この記事では、その「ワープア」について解説します。

目次

  1. 「ワープア」とは?
  2. 「ワープア」の実態
  3. 「ワープア」の背景
  4. 官製ワーキングプア

「ワープア」とは?

「ワープア」とは、「ワーキングプア(working poor)」を省略した言葉で、「ワーキングプア」とは、正規雇用者やそれに近いフルタイムで働いてはいるけれど、生活に必要な最低限の収入しか得ることができない人たちのことを言います。日本語では、「働く貧困層」「働く貧者」とも言われます。

この「ワーキングプア」という言葉は、アメリカ合衆国で使われ始めました。現代では、アメリカ合衆国だけでなく、日本はもちろん、欧州連合(EU)などの多くの資本主義の先進国で社会問題となっています。

「ワープア」の実態

日本におけるワーキングプアは、おおよそ年収200万円以下、月収15万円程度の世帯を指すことが多いようです。2010年の厚生労働省の発表によれば、労働者のうち男性の12.3%、女性では49.7%がこれに相当します。労働者全体に占める割合は、28.3%です。

国税庁の調査によれば、2006年以降、この年収200万円以下の層は1000万人を超えており、2017年にはおよそ1100万人となっています。

収入が低いと、レジャーや旅行、外食や衣料品などにかけるお金が少なくなります。病気になっても病院に行くことも控えがちになりますし、子どもの教育にかけられるお金も限られてきます。将来のために貯蓄をすることも難しい状況です。

地域による差もあります。沖縄や九州、東北などの地方のほうが、都市部よりも賃金が低い傾向にあるため、ワーキングプアも多い傾向にあります。

また、子育てと正社員としての仕事の両立の難しい母子家庭の多くがワーキングプアである、という現実もあります。年代別では、若年層に多いことが懸念されています。

「ワープア」の背景

1990年代、日本では労働市場の規制緩和や自由化が進みました。この結果、企業における人件費のコストが削減される一方で、非正規雇用者が大幅に増加し、正規雇用者に対しても賃金の水準の抑制が進みました。リストラなどで正社員としての職を失う人も増えました。

また、1990年代にはじまる長期の不況の影響で、新卒で正規雇用者として就職することができなかった人たちもたくさんいます。2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の影響もあり、まだ経済の状況は厳しく、一度、非正規雇用者になると、正規雇用者になるのが難しい状態が続いています。このため、個人の努力だけではワーキングプアから抜け出すのは難しい状況です。

最近では、高学歴ワーキングプアと呼ばれる人も増えてきています。修士課程や博士課程を卒業したのに正規雇用につくことができずに、ワーキングプアとなってしまった人たちのことです。学歴を生かした仕事に就けないまま、大学の非常勤講師や任期つきの研究員をしている人が多く存在しています。

また、弁護士や医師などの国家資格を取得したにもかかわらず、仕事に就けない人のことを高学歴ワーキングプアと呼ぶこともあります。

官製ワーキングプア

国家公務員、地方公務員などで、臨時職員や非常勤職員として雇用されている非正規雇用の職員や、民間に委託されている施設で働く非正規雇用の職員のことを言います。正規雇用の職員とほとんど変わらない労働内容でありながら、年収はほとんどがワーキングプアと呼ばれる200万円以下となっています。

職種としては、学童指導員、消費生活指導員、保育所の保育士で割合が高いとされています。また、女性の比率が高く、都道府県より市町村のほうが割合が高いとされています。

いつまで雇用があるかわからず、退職金も出ない官製ワーキングプアは、民間企業の非正規雇用者と同様に、さまざまな問題を抱えています。2016年の総務省の調査では、その数は全国でおよそ65万人とされています。

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