「渦中の人」とは
「渦中(かちゅう)の人」とは、「事件やもめごとなどの中心にいる人物」のことです。「渦中」は、「①水の渦巻く中。渦巻の中」、「②事件やもめごとで混乱している状態の中」という意味で、「渦中の人」には②の意味が反映されています。
「渦(うず)」とは、「水や空気が、らせんの形に巻き込みながら回る状態、その流れ」のことです。自然現象では、鳴門の渦潮(うずしお)や竜巻、台風などに渦がみられます。身近なところでは、浴槽の水を抜いたときに渦が生じることがありますね。
事件やもめごとによって、状況がめまぐるしく動いていることを「渦」に例え、「渦中の人」という言い回しが成り立っています。
「渦中の人」の使い方
例文
- 政界の汚職事件で渦中の人となった元首相が逮捕された。
- 新しい元号の考案者と言われている日本文学者が、渦中の人として注目を浴びている。
- 様々な最年少記録を更新した中学生棋士が、一躍将棋ブームの渦中の人となった。
「渦中」のみで使う場合
「渦中」の②の意味「事件やもめごとで混乱している状態の中」について、「渦中の人」以外の例文を挙げておきます。
【例文】
- 予期しなかった社内の派閥抗争の渦中に巻き込まれて関連会社に出向されられた。
- 幕末の動乱の渦中に身を投じた坂本龍馬は、薩長同盟や倒幕などに関わり、大政奉還後、京都で暗殺された。
- 今期、J1昇格争いの渦中にあるチームは、選手やコーチだけでなく、ファンも殺気立っていた。
- 事件の渦中にいると、かえって情報が遮断されて事件全体が見えなくなっていた。
「渦中の人」の類語
「張本人」
「張本人(ちょうほんにん)」とは、「事件やもめごとの原因を作った人物」のことです。もっぱら「犯罪や陰謀などの悪事を企てた人物、またはその首謀者」のことを指すときに使われています。
「事件の張本人」とか「うわさの張本人」といった使い方をされ、事件などの中心にいるという点で「渦中の人」の類語と言えるでしょう。
【例文】
- ○○中学校のいじめ問題で、張本人とされる生徒の写真が一部のメディア雑誌に掲載された。
- 悲惨な事故を引き起こした張本人に対する、被害者とその家族の怒りは計り知れないものがある。
「当事者」
「当事者」とは、「事件やある物事に直接関係のある人物や団体」のことです。「裁判の当事者」「紛争の当事者(当事国)」「けんかの当事者」などのようにいろいろな物事に使われています。物事と直接関係があるという点で、「渦中の人」の類語と言えるでしょう。
【例文】
- あの二人は、離婚調停の当事者だから、待合室を一緒にしては駄目だ。
- 交差点での事故の当事者は、どちらも「自分のほうの信号が青だった」と言って譲らない。
「中心人物」
「中心人物」とは、「事件や話題、あるいは組織や計画などの中心にいる人、重要な立場にいる人物」のことです。「事件の中心人物」「プロジェクトの中心人物」「うわさの中心人物」などのように使われます。
世間が注目する事件などにおける「中心人物」は、「渦中の人」と同義と言えます。また、ある物事の「中心にいる」という広い意味でとらえた場合でも、「渦中の人」と似ているでしょう。
【例文】
- 民主化運動の中心人物が、当局に逮捕されたというニュースが流れていた。
- 長年、クラシック界の中心人物として著名なA氏は、亡くなる直前まで現役で活躍していた。