「いたぶる」とは?
「いたぶる」は、漢字で「甚振る」と書きますが、現代日本語では、ほぼひらがなで表記されている言葉です。
「いたぶる」の意味は、大きくわけて次の3つが挙げられます。①脅してゆすりあげる(金品をとる)こと、なにかをせびったり、ねだること。②いじめたり、痛めつけること。いやがらせをすること。③激しく揺れること、揺り動かすこと。
意味③は、古い日本語での意味です。現代日本語では①と②の意味で用いられますが、①の「ゆする」という意味で使われることも少なく、ほぼ②の意味で用いられている言葉と言えます。
「いたぶる」の使い方
現代日本語では、「いじめたり、痛めつける」という意味で使われる「いたぶる」ですが、実際には、辞書の定義にはないニュアンスを多分に含んで使われることがあります。
すなわち、たんに痛めつけるだけではなく、面白半分であったり、いじめることに快楽を感じつつ、弱い立場の者にいやがらせをする、というニュアンスです。
また、強い立場を利用して圧迫しつづけるようなしつこさも含む場合があり、その意味では、パワーハラスメントにあたる行為のひとつではないでしょうか。
「いたぶる」の文例
- 鈴木部長は、山中課長に対し、事あるごとにいたぶる言動を続けたあげく、パワハラで告発されて左遷された。
- 野球部監督の指導は単なるいたぶる行為だと、全部員が校長に直訴した。
- 他者に対し、常にいたぶるような接し方をする人間は、大きなコンプレックスを抱えていることが多い。
「いたぶる」の類語
「いじめる」の意味と使い方
「いじめる」は、漢字では「苛める」、もしくは「虐める」と書きます。現代日本語で使われる意味は下記の2つです。
- 弱い立場の存在を苦しめたり、痛めつけたり、さいなんだりすること
- (あえて、ことさらに)厳しい扱いをすること
「いたぶる」の類語としては、意味1の「いじめる」が該当します。2の意味では、「体育祭に備えて、ちょっと足の筋肉をいじめておこう」のように、厳しく鍛える、負荷をかけるなどの使い方をされる場合が多くなります。
【文例】
隣の席の子があまりに自分をいじめるので辛かったが、クラスメートが担任に知らせて、助けてくれた。
「いびる」の意味と使い方
「いびる」で、思い浮かぶ言葉は「嫁いびり」ですね。昔のホームドラマの大きなテーマのひとつでした。「いびる」には、「あぶる。焼く。せがむ。ねだる」といった意味もありますが、現代日本語では、弱い立場の者を陰湿にいじめ、しいたげて苦しめるという意味で用いられます。
「陰湿に」というあたりが特徴的な部分で、ターゲットのささいな行動などに難癖をつけては、ねちねちと苦しめる行為です。「いたぶる」「いじめる」は人間以外も対象としますが、「いびる」は人間のみに用いられます。
【文例】
会社の田中さんは、新入社員が配属されるたびにねちねちといびっていたが、そのうち自分が課員全員から相手にされなくなり、辞めてしまった。
「蹂躙」の意味と使い方
「蹂躙」は、(じゅうりん)と読みます。この言葉の読み方や意味を知らない人は多いかもしれません。とはいえ、「人権蹂躙」(じんけんじゅうりん)という言葉は知っている人も多いでしょう。
「蹂躙」は、「いたぶる」の類語としては最上級に強い意味を持つ言葉です。対象の尊厳などをふみにじるレベルのいじめや、暴力や権力で対象を侵害することを意味します。
単なる「いじめ」や「いたぶり」を超える激しい侵害行為であり、「人権蹂躙」のように人の権利だけでなく、国家や領土、組織などにも及びます。
【文例】
- 山本社長は、役員全員の前で中村専務を怒鳴り、彼の人格をも否定するような言葉で蹂躙した。
- いにしえの世界では、大国が小国や小民族の領土に攻め込み、その国土や人民を蹂躙するような歴史が多々あった。