「啓蒙活動」とは?
「啓蒙活動」(けいもうかつどう)とは、社会問題について、人々にもっとよく知ってもらおうとする活動のことです。
多くの人が知らなかったり偏見を持っている事柄について、正しい知識と関心を持ってくださいと訴えかけることが、「啓蒙活動」の主な目的です。
取り扱う問題
啓蒙活動として取り扱う社会問題は、集まりや団体によってさまざまです。身近なところでは、交通安全協会の飲酒運転撲滅キャンペーン、NGOの難民保護、募金など。同性愛者やハンセン病などの差別問題を訴えるのも啓蒙活動の一例です。
活動の方法
啓蒙活動の方法は、予算や人員によりけりです。一般的にはビラ配りや講演会、ポスターによる周知などの方法で行われます。
「啓蒙」とは?
意味
「啓蒙」(けいもう)とは人々に正しい知識を与えて理性的に判断できるように導くことです。無知や偏見が理由で生まれる誤解を取り除くことで、社会をよりよくしていこうという思想を指します。
「啓蒙」は「蒙を啓く(もうをひらく)」と書きます。無知蒙昧(むちもうまい)を消し去り、より良い知識を与えるという意味です。哲学者カントの言葉を借りれば「未成年状態を脱すること」。子供を大人にするように、無知な人を導くことです。
「教える」という意味には、教育や指導などの言葉があります。これらの言葉と比較すると、「啓蒙」は個人に対してというより、特に社会や大衆に訴える時に頻用されます。
由来
「啓蒙」の歴史は中世ヨーロッパ、中学校の社会科で習う「ジョン・ロック」や「ジャン・ジャック・ルソー」が登場する時代が原点です。
当時は王様が一番偉い専制政治が一般的でした。しかし、民主主義というもっと良い考え方があるよ、と訴えたのが「啓蒙」の始まりです。
「王様が一番偉い」など、常識とされることであっても疑い、自分たちで物事を判断できるように大衆を導く。これが「啓蒙」の出発点です。
「啓蒙活動」の使い方
「啓蒙活動」という言葉そのものには良い意味も悪い意味もありません。文脈や状況次第でさまざまに解釈できる言葉です。
「まだ学生なのに啓蒙活動に参加してるなんて」なら、評価する、感心する気持ちがこもっていますね。一方、「受験生が啓蒙活動とは、ご立派なことで」なら、勉強しなくていいのかと言外に苦言を呈していたり、皮肉を言っていると言えますね。
注意点
歴史的にも「啓蒙」は民衆や社会といった不特定多数の人を対象にしてきました。そのため、「啓蒙活動」もターゲットは大衆と言えます。
この点で、教育や指導、研修といった言葉とは区別できます。いずれも個人的な問題に使用できますが、「啓蒙」は個人には使いません。「啓蒙活動」は社会全体にかかわる問題について、社会全体に訴えるような活動です。
使用例
- 毎週末に、彼は環境保護団体で啓蒙活動をしているそうだ。
- 彼女はアーティストとして活躍する傍ら、性的マイノリティとしてLGBT概念の普及・啓蒙活動にも力を入れている。
- 長年続けてきた我々の啓蒙活動が実を結んだといえよう。
「啓蒙活動」の類語
啓発活動
「啓蒙」と似た言葉に「啓発」(けいはつ)があります。漢字も一字違いで紛らわしいですね。「啓蒙」は無知な人々に正しい知識を与え、理性的に判断できるよう導くことでした。それに対し、「啓発」は自力では気づかないことを教え、高度な段階に導くこと。
つまり、0点の生徒が及第点の60点をとれるように教えるのが「啓蒙」で、60点取れている生徒に100点を取らせるように教えることが「啓発」と言えます。「啓発」の方がより深く理解をうながすというイメージですね。
教宣活動
「教宣活動」(きょうせんかつどう)は「教育宣伝活動」の略です。政党や団体などが情報を伝えるための活動のことを指しますが、政治色の強い言葉であるためか、最近はあまり使われなくなってきています。
イメージしやすい例は、政党の広報誌です。選挙の前などにパンフレットが届く家庭もあるでしょう。そこには、今どんなことが問題になっていて、どんなことをやろうとしているのか書いています。これまでの実績が書かれていることも多いですね。