「下級国民」とは?意味や使い方をご紹介

「下級国民」という言葉を、インターネット上のSNSなどで見聞きしたことはないでしょうか?ある時期をきっかけに俗語的に知られるようになった言葉ですので、あまり馴染みがないという方もいらっしゃるかもしれません。ここでは「下級国民」の意味や使い方を解説します。

目次

  1. 「下級国民」とは?
  2. 「下級国民」の使い方
  3. 「下級国民」という言葉の由来
  4. 「下級国民」と日本社会の分断

「下級国民」とは?

「下級国民」(かきゅうこくみん)とは、経済力や社会的な地位などの観点において、「上級国民」には分類されない、一定水準よりも等級が下であると分類される国民のことを指す俗語的表現です。

「下級」も「国民」も一般的な単語ですが、「下級国民」という用語は歴史が新しく、2019年に起こったある出来事(後述)をきっかけに作られ、インターネットユーザーを中心に世間に広まりました。

正式な用語ではない

「下級国民」は、政府あるいはそれに準ずる公的機関によってその語が示すものが定義されている用語ではありません。また、諸機関において「上級」「下級」といった基準で国民を区分しているという事実も確認されていません。

さらに言えば、この語を使用している人間の中でも、それが指示する対象は一様ではありません。あくまでも、市井でまことしやかに交わされている俗語・スラングの一種ですので、取り扱いには注意が必要です。

「下級国民」の使い方

レッテル貼り

「下級国民」という言葉は、もし国民を「上級」と「下級」に二分し、選別しうると仮定した場合、「下級」に属すると思われる者を対象として使います。

選別の基準となるものは、大まかに社会的条件全般(地位、権力、出自、家柄、学歴、経歴、受賞歴、財産の多寡、人脈の広さなど)です。

しかし、「下級国民」と確実に裁定するための客観的な線引きがどこかにあるわけではなく、実際には「レッテル貼り」や「決めつけ」としての側面が大変強い言葉です。

したがって、「下級国民」という言葉を自分以外の特定個人や特定層に向ける場合には、良くて揶揄(やゆ)、悪くて侮辱や名誉毀損と捉えられる可能性があります。あくまでも俗語であることを念頭に、公的な場所での使用は控えたほうが無難でしょう。

「上級国民」との対比

後ほど説明しますが、「下級国民」という言葉は、まず「上級国民」(じょうきゅうこくみん)という言葉が先にあり、その対義語として作られ、広まったものです。

よって「下級国民」は、「上級国民」なる特権階級の国民が存在することを前提とし、自分(および自分の属する階級)がその階級に含まれていないことを自虐的・皮肉的に表現する言葉としての使用例が多くみられます。

自分および自分を含む階級を「下級国民」と称する場合には、「下級である」ことよりも「上級でない」ことに重点が置かれているため、笑い・共感を誘うノリや、ブラックジョークの文脈で使うことができます。

例文①

(サラリーマン)

「下級国民」なんてただのレッテルだってわかってはいるが、金持ちばっかり優遇されてる社会構造なのは確かだよな~。

例文②

(OL)

出生率の低下が問題になってるけど、今の日本で、私みたいな下級国民が結婚して子どもつくる余裕なんかないわよね。

例文③

(ネットユーザーA)

ちょっとくらい酒飲んで運転しても、ばれないよな~?(冗談)

(ネットユーザーB)

上級ならまだしも、お前みたいな下級国民はすぐ逮捕されるぞ(笑)

「下級国民」という言葉の由来

東池袋自動車事故

2019年4月、東京都東池袋で、高齢ドライバーが運転する乗用車が通行人をはね、2名死亡、9名を負傷させるという自動車事故が起きました。

この事件において、警察は加害者のドライバーを現行犯逮捕せず、その後半年以上にわたって送検の動きすら見せませんでした。これに対し、世間では「特別扱いなのでは?」「特権なのでは?」という疑念や批判が噴出したのです。

加害者が元官僚であり、ある分野の研究者としても大変高名な人物であったことは事件直後から発覚していました。このため、逮捕されない理由として人々によって行われた加害者へのレッテル貼りが「上級国民」でした。

「上級国民」と「下級国民」

「上級国民」というフレーズは自己直後からネット上および一部マスコミを介して世間に広がりを見せ、ネット上では「上級国民は人を殺しても無罪なのか」といった、皮肉的なコメントが多く交わされました。

この「上級国民」という言葉に対して対義語的に生まれたのが「下級国民」です(また、知名度は少々落ちますが「中級国民」という言葉も同じ頃に作られました)。

この由来から考えると、「下級国民」は、「あるべき基準より下の等級に位置付けられる国民」というよりは、「理不尽な特権を有する上級国民ではない」というニュアンスが込められていることがわかりますね。

「下級国民」と日本社会の分断

「下級国民」や「上級国民」という俗語が広まった契機としては、前述の自動車事故の影響が大きかったのはもちろんですが、日本社会が上級・下級で分断されている(されはじめている)という世相も背景にあったのではと考えられています。

かつて「一億総中流」と言われた日本社会は、さまざまな要因によって分断が進み、富める者はますます豊かに、貧しい者はますます貧しくなる、という二極化のイメージが醸成されてきたといえるのではないでしょうか。

一見荒唐無稽な俗語のようでも、「下級国民」という言葉には、大多数の国民による、社会構造への不満や不平等感が込められているといえるかもしれません。


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