犬や狼の「遠吠え」の意味
本来、「遠吠え」という言葉は犬や狼が声を長く引き、遠くまで響くように吠えることを指します。
狼が遠吠えをする場合
狼が遠吠えを行う理由については諸説ありますが、「縄張りを知らせるため」「群れからはぐれた仲間を探すため」「仲間との絆を深めるため」といった合理的な役割があり、本能やストレスによるものではないという見方が有力です。社会性の強い動物である狼は遠吠えによって仲間とコミュニケーションを取り、群れを維持しているのです。
犬が遠吠えをする場合
犬は狼が家畜化したものですが、たまに遠吠えをすることがあります。救急車のサイレンが聞こえてきたときに遠吠えをすることがありますが、これは遠吠えと周波数の近いサイレンの音を、仲間からの呼びかけと勘違いして呼応しているからです。また、飼い主と触れ合えずに寂しいときにも、コミュニケーションを取ろうとして遠吠えすることがあります。いずれも狼であったころの習性の名残りであり、あまり合理的な理由はないようです。
遠吠えの英語表現
英語では、遠吠えのことを「howling」といいます。通信用語で、マイクとスピーカーを近づけたときに発生する不快音を「ハウリング」といいますが、これはこの音が遠吠えを連想させることから来ています。ちなみに、遠吠えではなくワンワンと吠えることは「bark」といいます。
ことわざ「負け犬の遠吠え」
「負け犬の遠吠え」という有名なことわざがあります。勝負に負けた者が、負けを認めないような発言をしたり、陰口を言ったりする様を表すことわざです。
- 君がいくら自分の作品が優れてると言おうと、コンペで落選した以上は負け犬の遠吠えにしかならないよ。
- 彼は僕のことを馬鹿にするけれど、僕のほうが出世しているのだから負け犬の遠吠えでしかない。
というように使います。揶揄の意味合いが強い表現なので、使いどころには気をつけましょう。ちなみに、英語では、「A barking dog seldom bites(吠える犬はめったに噛まない)」「Losers have bigger mouths(敗者は大口を叩く)」などと表現します。
「負け犬の遠吠え」の類語・言い換え表現
「負け犬の遠吠え」を他の言葉で言い換えたいときは、「負け惜しみを言う」と表現すると良いでしょう。「負け犬の遠吠え」の類語としては、「往生際が悪い」「潔くない」というような表現があります。
また、意味の近いことわざとして、「引かれ者の小唄」というものがあります。刑場に引き立てられていく囚人が、余裕ぶって歌を口ずさんだところで滑稽であるということで、窮地に陥っている者が余裕ぶった発言をする様子を揶揄することわざです。
エッセイ「負け犬の遠吠え」
酒井順子が2003年に発表した、「負け犬の遠吠え」というエッセイがあります。30代以上の子供を持たない未婚女性は、いくら仕事ができても「負け犬」であるとした上で、そのような女性を応援し、上手な生き方を提案する内容のエッセイです。
このエッセイがベストセラーになったことにより「負け犬」ブームが起こり、テレビや雑誌で「負け犬」女性を扱った特集が多く組まれました。その後も「東京タラレバ娘」など、30代の未婚女性を扱ったエッセイや漫画の流れは続いています。
映画「孤高の遠吠」
小林勇貴監督、2015年制作の「孤高の遠吠」という映画があります。静岡県富士宮市を舞台に、暴力的な不良の社会に飲み込まれていく少年たちを描いた作品です。
低予算で制作され、公開も小規模でしたが、ライムスター宇多丸を始めとする映画評論家の賞賛を受けました。リアルな不良の描写が印象的で、登場人物を演じているのもプロの役者ではなく、富士宮市でスカウトした実際の不良だということです。