「言質」とは
「言質」とは、交渉ごとなどの話し合いで、できるだけ自分(または自分たち)が有利になるように話し合いを進めるための、相手との駆け引きに関係した言葉です。
「言質」となるひとことを言うか言わないかで、話し合いの結果は後々大きく変わっていくことになります。それでは「言質」について読み方・意味・使い方などを確認していきましょう。
「言質」の読み方
「言質」は読み方の難しい言葉です。げんしつ?げんしち?実は、正しい読み方は「げんち」です。
「げんしつ」または「げんしち」などと読む場合もありますが、これはもともと誤った読み方であるにもかかわらず、そのように読んでしまう人が多いために次第に定着してきた「慣用読み」といわれるもので、正式な読み方ではありません。
「言質」の「言」
「言質」の「言」は、この場合、口に出した言葉・言った内容などを表しています。
「言質」の「質」
「言質」の「質」は何を表しているのでしょうか。「質」という字にはいろいろな意味・読み方があります。少しくわしく考えてみましょう。
「質」の意味その1(特質・性質・気質)
まず「質」には、「いろいろな物の特徴や人物の性格」といった意味があります。この場合は、「しつ・たち」などという読み方になることが多いです。特質・性質・気質などの熟語や「あの人は質(たち)が悪い」という文の中の「質」はその意味になります。
「質」の意味その2(質問・質疑)
また「質」には「明らかでないこと、はっきり分からないことについて聞いて確認する。」という意味もあります。この場合は「しつ・ただ(す)」などの読み方になることが多いです。質問・質疑などの熟語や、「問い質(ただ)す」という文の中の「質」はその意味になります。
「質」の意味その3(人質・質物)
しかし「言質」の「質」が表しているのは、そのどちらとも違います。
「質」は「しち・ち」などと読んだ場合は、約束事などを確実に実行するための保証や担保などを表す意味になります。
たとえば、お金を借りる人が、必ず返すという約束を保証するために自分の高価な物・大切な物を貸し主にあずけたときは、その物のことを「質(しち)」または「質物(しちもつ・しちもの)」などとよびます。
戦国時代に、大名同士がお互いの友好を保証し合うために互いの子息の身柄を相手側にあずけたりした場合はその子息は「人質(ひとじち)」となります。籠城事件などで、犯人が自分の安全を保証するために、一方的に拘束した人も「人質」とよばれます。
「言質」の意味
「言質」は、言葉を意味する「言」と保証を意味する「質」の組み合わせですから、交渉などの話し合いの場で約束した事柄について、後で証拠になる言葉・発言のことという意味になります。
「言質」の使い方
「言質」という言葉は「言質を取る」「言質を取られる」「言質を与える」などの言い方で使われることが多いです。
「言質を取る」とは、交渉の場などで、自分に有利な約束をしたことの証拠となる相手方の発言を引き出すことを言います。「言質を取られる」「言質を与える」とは、それとは逆に、自分が不利になる約束の証拠となる発言をしてしまうことです。
使い方としては次のような例が考えられます。
「正式な契約の前に、相手方に言質を与えるようなことがあってはいけないから、不用意な発言はつつしまなければいけない。」
「国会の証人喚問で、証人が繰り返し『記憶にございません。』『発言を控えさせていただきます』などと言うのは、言質を取られるのをふせいで、後々自分が不利にならないようにしたいからだ」
「金額の事について、相手方に値上げしないように約束してほしいと繰り返し交渉したが、相手側は『できる限り努力します。』『可能であればご希望に沿えるようにしたいと思ってはいます。』などと繰り返すばかりで、値段据え置きの言質を取ることはできなかった。」