「野卑」の意味
「野卑」(やひ、「野鄙」とも書く)には、以下の二つの意味があります。
- 地位・身分が低いこと。また、その人。
- いやしく、下卑(げび)ていること。下品であること。
「野」には「野蛮」「粗野」などの言葉に見られるように、「ありのまま、洗練されていない、いやしい」といった意味があります。
「卑」は、「地位・身分が低いこと」や、「いやしく下品なこと」、「いやしめること」などの意味です。「卑劣」「卑下」などの言葉がありますね。
「野卑」の使い方
「野卑」は、少々固い言葉であるため、日常使いというよりは、小説などに使う文章語として運用されることが多いでしょう。
けなし言葉や侮蔑語としての側面もある一方、口にするのも憚られるような表現を避けて、あくまでも「無作法である」「無教養である」「下品である」あるいは「悪趣味である」という様子を客観的に言う言葉であり、使う側の最低限の品位を保つ言葉ともいえます。
また、一種の比喩として、上品なものや、高度で洗練されたものへの対義語的な表現として「野卑」と言われることもあります。
例文
- 別れ話をしているとき、彼は私との性行為についてわざと野卑な言い方をして、私を挑発した。
- 深夜、場末の酒場には、荒くれものたちの野卑な笑い声が飛び交っていた。
- スラム育ちの少女は、十三歳とは思えないような野卑な悪態をついた。
- 彼は貧乏で、服装はいつもぼろぼろだったが、人柄は誠実で、印象は野卑ではなかった。
- 昼間過ごした美術館の高級カフェに比べると、マンションの自分の部屋は野卑そのものだった。
「野卑」の類語
「野卑」の類語としては、以下のような言葉が該当します。
- 下劣(げれつ)…道徳などの面で劣っていること。卑しいこと。
- 下種(げす)…品性が下劣であること。「下衆」とも書く。
- 汚い…下品で、いやらしい。乱雑である。よごれている。
- はしたない…下品で見苦しい。「端ない」と書く。
- 蓮っ葉(はすっぱ)…(女性の)態度などが軽はずみで下品なことや、その人のこと。
- 安っぽい…品格に欠けている。
- 卑猥(ひわい)…下品でみだらなこと。
- 猥雑(わいざつ)…下品でごたごたしていること。
- 尾籠(びろう)…汚いこと。汚らしいこと。
- 無礼(ぶれい)…礼儀をわきまえないこと。失礼。