「レクイエム」とは?意味や使い方をご紹介

クラシック音楽が好きな人なら、「レクイエム」を聴いたことがある、あるいは歌ったことがある、という人もいるのではないでしょうか。また、カトリックの信者で「レクイエム」に関わった人もいるでしょう。この記事では、「レクイエム」について解説します。

目次

  1. 「レクイエム」とは?
  2. 「レクイエム」の使い方
  3. 聖歌「レクイエム」
  4. 三大レクイエム

「レクイエム」とは?

「レクイエム」はラテン語で、「安息を」という意味の言葉です。「Requiem」と表記され、次のような意味で使われています。

  1. カトリック教会で、死者の安息を神に願うためのミサ(典礼)のこと。カトリック教会はローマ教皇を最高指導者とする、キリスト教の教派の一つ。全世界におよそ12億人の信徒がいるとされ、キリスト教最大の教派である。同じくキリスト教の教派の一つである聖公会でもレクイエムは行われるが、聖公会では「ミサ」という表記はしない)
  2. 1のミサで歌われる聖歌のこと。狭い意味ではこの聖歌のことを指す。

このほか、本来の宗教上の意味を持たず、単純に「葬送曲」「死を悼む」といった内容を持つ音楽等の作品タイトルとして「レクイエム」が使われることもあります。

「レクイエム」と「パニヒダ」

上記の意味以外に、キリスト教の教派の一つである正教会(ギリシャ正教会)で行われる「パニヒダ(意味:正教会における死者の安息を願う奉神礼)」を「レクイエム」と呼ぶことがあります。奉神礼は、カトリック教会でのミサにあたります。

ただし、パニヒダはカトリック教会での「レクイエム」とは形式が異なるため、パニヒダを「レクイエム」と呼ぶのは適切ではない、という意見もあるようです。

「レクイエム」の使い方

  • 大学の合唱団でレクイエムを演奏したが、言葉が難しくて大変だった。
  • モーツァルトのレクイエムを聴き、涙を禁じえなかった。

聖歌「レクイエム」

聖歌として最も古い「レクイエム」は、14世紀までに成立した『グレゴリオ聖歌』と言われています。以後、中世からバロック、古典派、ロマン派、現代音楽に至るまで、クラシック音楽の長い歴史の中で、たくさんの「レクイエム」が作られました。

多くは同一のラテン語の典礼文に曲をつけたものですが、英語によるものや、ドイツの作曲家であるブラームスが作曲した『ドイツ・レクイエム』のようなドイツ語によるものもあります。

日本では、かつて「レクイエム」を「鎮魂曲(ちんこんきょく)」と訳されることが多くありました。しかし、「鎮魂」は神道の用語であるため、現在はこの訳はあまり使われなくなってきています。

日本人による「レクイエム」

日本人の作曲家による「レクイエム」も多数あります。しかし、日本の「レクイエム」は「典礼」の意味を含んでいるものばかりではありません。

中には、映画『ゴジラvsデストロイア』の劇中音楽として書かれたものや、原爆や震災で命を落とした人たちを追悼する意味を込めて書かれたものもあります。

三大レクイエム

多くのレクイエムの中で、傑作として名高い次の三つのレクイエムを「三大レクイエム」と呼ぶことがあります。

モーツァルトのレクイエム

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)はオーストリアの作曲家で、古典派音楽を代表する作曲家の一人です。短い生涯の中で900曲以上を作曲したと言われ、幅広い作品が今でも親しまれています。

モーツァルトが作曲した「レクイエム」が『レクイエムニ短調K.626』、通称「モツレク」です。有名なオペラ『魔笛』作曲中の1971年に、匿名の人物から依頼を受けて作曲を開始したそうです。

ところが、作曲中にモーツァルトは他界し、結局、彼自身の手で完成させることはかないませんでした。そのため、現在残されている「モツレク」は、弟子たちによって補筆されたいくつかの版が存在します。

ヴェルディのレクイエム

ジュゼッペ・ヴェルディ(1813~1901)は、イタリアの作曲家です。『椿姫』や『アイーダ』など多くのオペラを作曲し、「オペラ王」とも呼ばれています。

ヴェルディは、1874年に「レクイエム」を完成させています。原題は『マンゾーニの命日を記念するためのレクイエム』と言い、イタリアの文豪であるアレッサンドロ・マンゾーニのために作られたものです。

このレクイエムは「オペラ王」のヴェルディらしく、華麗でドラマチックな展開が特徴で、聴衆にも広く受け入れられました。一方で、教会音楽らしくないという批判もあったようです。

フォーレのレクイエム

ガブリエル・ユルバン・フォーレ(1845~1924)はフランスの作曲家で、室内楽曲や歌曲を多く残しています。また、教会オルガニストとしても活躍した人物です。

フォーレの「レクイエム」(『レクイエムニ短調作品48』)は、1888年の完成の後、1893年、1900年の2回にわたってフォーレ自身の手で改編されています。現在は、1900年の作品が演奏されることが多いそうです。

フォーレのレクイエムは、それまでの音楽とは異なる斬新な曲調が、初演の際に司祭から叱責を受けるほどでした。また、ミサに必須である「怒りの日」が作曲されていないなどの特徴があります。

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