「門松は冥土の旅の一里塚」とは?意味や使い方をご紹介

「門松は冥土の旅の一里塚」という言葉を聞いたことがありますか。「門松」と「冥土」、およそ結びつかないような語句が並んでいますね。「門松は冥土の旅の一里塚」について、意味や使い方、作者の一休宗純のエピソードについても紹介します。

目次

  1. 「門松は冥土の旅の一里塚」の意味
  2. 一里塚とは?
  3. 「門松は冥土の旅の一里塚」の使い方
  4. 一休宗純のエピソード

「門松は冥土の旅の一里塚」の意味

「門松は冥土の旅の一里塚」とは、室町時代の臨済宗大徳寺派の僧侶、一休宗純(読み:いっきゅうそうじゅん)が詠んだ狂歌と伝えられています。歌全体は「門松は冥土の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし」と続きます。

意味は、「人はお正月に門松を立てていて新年のお祝いをしているが、年を重ねていると冥土への旅が近づいていることになり、門松が命が尽きる目安の一里塚になっている。めでたいものでもありながら、死出の旅路となると、めでたくもないものだ」というものです。

狂歌とは短歌の一種で、日常生活の出来事を題材にして風刺を利かせた滑稽な短歌を言います。俗語のような口語表現を使って、機知に富んだ内容のものが多いです。

違う歌も伝えられている

「門松は冥土の旅の一里塚」と似ていますが、違う歌が一休宗純作と伝えられています。

この歌は、元々、一休宗純と親交のあった蜷川親当(にながわちかまさ)との道歌問答で「門松は冥途の旅の一里塚馬駕籠もなく泊まりやもなし」と読まれ、それが変化して「正月は(元日や)冥途の旅の一里塚」になったという説もあります。

なお、一休宗純は、「とんちの一休さん」として、広く知られている僧侶です。また、蜷川親当は通称、新右衛門(読み:しんえもん)といい、アニメ「一休さん」で、主人公の一休さんと友人関係にあった武士、新右衛門さんのモデルとなった人です。

一里塚とは?

一里塚とは、昔、東海道などの大きな街道沿いに、一里(およそ3.927km)の長さごとに設置された塚(土で盛られた目印)のことを言います。

塚の横には目立つように榎(えのき)や松などの目立つ木が植えられていて、旅人がどのくらいの距離を歩いているか分かる目安になりました。

「門松は冥土の旅の一里塚」の歌から考えると、人生を冥土への旅に見立て、人がどのくらいあの世に近づいているのか、門松をその年ごとの塚(目印)として一里塚になぞらえています。

昔の年齢の数え方

なぜ、お正月に立てられる門松が一里塚にたとえられるのか不思議に感じる方もいるでしょう。昔は、数え年で年齢を表しました。誕生した時点で1歳となり、明くる年の1月1日に1歳ずつ年を取っていくのです

数え年では1月1日に生まれた場合、2歳になるのは翌年の1月1日ですが、12月31日に生まれた場合は翌日の1月1日にはもう2歳になってしまいます。同じ年齢でも最大で364日の誤差が出る場合もあるでしょう。

一休宗純の生きた室町時代は数え年で年齢を計算し、年が明けると皆平等に年を重ねていました。正月に1歳ずつ年が増えるため、どの人も新しい年になるたびに、それぞれ人生の終わり(冥土への旅)が少しずつ近づくことになります。

「門松は冥土の旅の一里塚」の使い方

20代~30代ぐらいの方は、寿命が尽きること、自分が死ぬということについて、どことなく他人事のように考えられ、あまり意識しないかもしれません。しかし、40代以上となると、今後のこと考えたり、身近な人の死に接したりすることが多くなります。

そのようなことから、お正月を無事に迎えても、自分が1歩ずつ死に近づいていると考えると手放しでめでたいと考えられないという心境を表す際に使われます。

また、高齢の方が、人生の終わりを自覚し、子や孫などのような自分よりも若い世代の人に動けるうちに精一杯生きるための努力をし、若いうちにできることを楽しむようにと諭す際にも、この言葉を用いることがあるでしょう。
 

  • 門松は冥土の旅の一里塚のごとく、だんだん年をとって棺桶の縁に足をかけ始めていると考えると嫌だな。
  • 門松は冥土の旅の一里塚だから、限りある人生、後悔しないように生きるんだよ。

一休宗純のエピソード

「門松は冥土の旅の一里塚めでたくもありめでなくもなし」は、一休宗純の作と伝えられていますが、これは、正月に一休宗純がした下記の奇行(きこう:普通の人はしない変わった行動)からきているということです。

正月で人々が新年を迎える喜びの中で過ごしている時に、一休宗純が、杖の上部にしゃれこうべ(どくろ)を取り付けて、「ご用心、ご用心」と大きな声で叫びながら町中を歩いたというエピソードが伝えられています。


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