「権化」とは?意味や使い方をご紹介

「権化(ごんげ)」という言葉の意味をご存知でしょうか。「悪の権化」「欲望の権化」などという表現に聞き覚えがある方もいるかもしれません。仏教にも関係がある言葉です。ここでは、「権化」の意味や使い方を、いくつかの類語も含めてご紹介します。

目次

  1. 「権化」とは?
  2. 「権化」の使い方
  3. 「権化」の類語

「権化」とは?

「権化(ごんげ)」とは、「神仏などが権(かり、仮)の姿になってこの世にあらわれることや、その姿のこと」を言います。

また、その意味と並んで、「ある抽象的な性質が、具体的な姿をとってあらわれたもの、その類型」という意味もあり、一般的にはこちらのほうが馴染みがあるかもしれません。例えば、悪そのものが形を成したかのような人のことを、「悪の権化」などと呼びます。

「権」とは?

「権」の字は、「権力」「権威」などのように何かを支配する力という意の熟語が知られていますが、もともとは「おもり、はかりの分銅」の意です。「権力」などの言葉は、おもり(錘)が物事の軽重を支配することから来ています。

さらに、「物の重さをはかり、考える」意から、「物事を図る」「間に合わせる、臨機の処置」「つりあい」「かりそめ」などの意味もあり、「権化」の場合もこれらの意味から由来すると考えられます。

神や仏はそのままの姿であらわれるのではなく、不思議な動物や現象など「権」の姿に化けて力を及ぼす、と想像すれば、一般的な意味も含め、「権化」のイメージがつかみやすくなるのではないでしょうか。

「権化」の使い方

神仏における「権化」

宗教用語における「権化」は、主に仏教や日本宗教で用いられる神号で、「権現(ごんげん)」とも言います(権の字義に照らして、仮に現れること、と理解できますね)。

例えば、民間信仰や地域信仰などでは、その土地で何らかの事故などで死亡した名士などが、死後何らかの形をもって現れる「権現」として祀られる例があります。

「権現」の例としては、「飯縄権現」「金毘羅権現」「蔵王権現」「鈴鹿権現」などがあります(他多数)。

一般的用例の「権化」

一般的な意味における「権化」は、主に「〇〇の権化」というかたちで、何らかの抽象的な概念(精神的特質や思想など)が具体的なかたちとなった(と思われる)人やものを指して使います。

抽象的な概念とは、例えば「正義」、「悪」、「美」、「理想」、「欲望」、「恐怖」「~精神」、「~主義」などです。いずれも、具体的な対象物を指示するのが難しいものですが、それゆえに、それが具体化していることへのインパクトを表現できます。

また、「概念の具体化」ということは、「その概念が示す典型例」ということでもあります。「〇〇の権化」とは、「〇〇の見本って、ああいう人・もののことだよね」と言う表現でもあるのです。

【例文】

  • 〇〇総統は、△△帝国において恐怖の権化として君臨し、民を支配していた。
  • 愛の権化を自称する彼女は、誰も彼もを愛すると誓った。
  • あの人は平凡さの権化で、これという特徴を挙げるのが難しい。
  • あの作品は、民族差別主義の権化だ。自由主義社会には受け入れられないだろう。

「権化」の類語

化身

「権化」の同義語と言って良いほど意味が近いのが「化身(けしん)」という言葉です。宗教的意味でも一般的意味でも使うことができ、使い方もほぼ変わりありません。

ただ、「化身する」と動詞のかたちでも使用できる点は「権化」との差異であると言えます。

【例文】

  • アルビノで肌が白い動物は、神の化身として崇められることがあった。
  • あのファンタジー小説は、古の大樹が少女の姿に化身して主人公を救うというお話だった。

分身

「分身(ぶんしん)」とは、ひとつの身が二つ以上に分かれることや、その分かれたものをいい、派生的に「生まれた子」や、「ひとつの組織から派生した組織」なども指します。古くは「ふんしん」と読みました。

また、一般にはあまり使われませんが、仏教用語で「仏が衆生(しゅじょう:人々など命あるもの)を救うために種々の姿をとって現れること、その姿」の意もあり、「権化」や「化身」とかなり近い意味の言葉であることがわかります。

【例文】

  • アクションゲームで、プレイヤーの分身であるキャラクターを操作する。
  • 自分の分身(子)をこの世に残すことは、彼の悲願となっていた。
  • 鳳凰は神の分身であるとする神話もある。


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