「使命」の意味とは?
「使命」の「使」は、使いをする者(用事を頼まれる人)や、「~をさせる」といった使役などの意味です。また、「命」は、言いつけや仰せなどの立場が上の人からの命令や、天の定めや運命のめぐり合わせなどを指しています。
よって、「使命」(しめい)の意味は以下の通りです。
- 使者の任務
- 使いの者
- 課せられた重大な任務
- 天職
「使命」の使い方と例文
1.使者の任務
1の意味の「使命」は、「使命をまっとうする」(任務を成し遂げる)、「使命を帯びる」(仰せを引き受ける)といった成句として用いられる場合も多くあります。
【例文】
- 特別な使命を帯びて、隣国に出向いた。
- 信書を携えて某国の高官と会談し、使命を無事に遂行した。
2.使いの者
2の意味の「使命」は、立場が上の人から命じられた使者を指します。おもに、重要な役目を担う人を言いますから、軽いお使いを頼まれた人に対しては用いられません。
【例文】
- 国からの特別な使命に任じられ、使節団と対面した。
- お家騒動で危機に陥った殿から使命に選ばれ、水戸光圀公のもとに助けを求めに行った。
3.課せられた重大な任務
「使命」の3の意味は1の意味と似ていますね。しかし、こちらは目上の人が命じた任務だけでなく、自分が担っていると自覚している役割、周囲から期待されている働きなどにも用いられます。つまり、任務の重要度にウェイトが置かれているということです。
「使命感」という複合語として目にする機会も多いでしょう。この場合は、「使命感に駆られる」(重大な任務を果たそうという強い気持ちがある)のような成句として使われることもあります。
【例文】
- 「地域の自然を保護するのは我々の使命だ」とボランティアの人が語っていた。
- 川で溺れていた子供を助けたのは、使命感に駆られた警察官だった。
4.天職
「使命」の4の意味である「天職」とは、その人の生まれ持った性分や才能が活かせる、天から決められた職業のことです。ですから、意味4は意味3の「化せられた重要な任務」のうち、天(神仏などの偉大な存在)から与えられた重大な任務を表していると言えます。
【例文】
- 画家という職業は、私にとって使命だ。
- 明智小五郎や金田一耕助には、探偵業が使命だったのだろう。
「使命」の類語
1.使者の任務
1の意味で用いられる「使命」の類語には、「責務」(責任をもって果たさなければならない務め)や「役割」(与えられた仕事・役として果たさねばならない務め)などが挙げられるでしょう。ただし、これらは「使者として命じられた」という含みがないという点では異なります。
【例文】
- 彼は市長としての責務を十分果たしたと評価されている。
- 若い社員がプロジェクトリーダーという役割を任されるのは異例のことだった。
2.使いの者
意味2の「使命」に近い言葉に「伝令」(でんれい)があります。これは、上の立場からの命令を伝えること、もしくはその役目を担う人を指す言葉です。
役目(意味1)と役目を担う人(意味2)の両方を指すという点でも「使命」と似ていますね。しかし、「使命」が対象とする役目は命令の伝達に限りませんので、同義とは言えません。
【例文】
- 長官から機密情報の伝令を依頼された。
- 朝早くに伝令がやって来て、部隊の皆に緊張が走った。
3.課せられた重要な任務
3の意味の「使命」に似た言葉には、「大役」(たいやく)、「大任」(たいにん)が挙げられます。いずれも、重大な責任のある役目、重大な任務などの意味を持つ言葉です。
【例文】
- プロジェクトリーダーという大役を任され、身の引き締まる思いだ。
- 観光大使という大任を無事に果たし終えて、肩の荷が下りた。
ただし、「大役」には他に、「劇などで重要な役や難しい役」「花札で高得点を稼げる役(やく:点を取る条件)」という意味もあります。
4.天職
4の意味の「使命」の類語には「天命」(てんめい)があります。これは、天から人に示されたやるべきことへの意志、生きる上で神仏から与えられた重要な任務といった意味の、古代中国の思想に由来する言葉です。
【例文】
- やるべきことは全てやりきった。今の心境は「人事を尽くして天命を待つ」だ。
- 取り柄のない人間だが、目立たなくても人に役立っているという実感はある。現在取り組んでいることが天命なのかもしれないね。
また、才能や性格や能力に合った職業という意味の、「適職」も「使命」に類する言葉と言えるでしょう。ただし、「適職」は現在の状態に適する職業を指しますので、生まれながらの資質に合った職業を指す「使命」とはややニュアンスが異なります。
【例文】
- 企業の適職診断を受けたが、事前に予想していた結果とは違った。
- 周囲からは向いていないと反対されたが、やりがいを感じられるこの仕事は適職だと思う。