「禁忌を侵す」とは?意味や使い方をご紹介

「禁忌を侵す」という言葉を目にしたことはあるでしょうか?何やら、とてつもなく悪いことを示しているイメージのある言葉ですが、正確にはどういったことを指すのでしょう。今回は、この「禁忌を侵す」という言葉について、意味や使い方を紹介します。

目次

  1. 「禁忌を侵す」とは?
  2. 「禁忌」とは?
  3. 「侵す」とは?
  4. 「禁忌を侵す」まとめ

「禁忌を侵す」とは?

「禁忌を侵す」とは、簡単に言えば「してはいけない、とされていることをする」という意味の言い回しです。「禁忌」と「侵す」という言葉について、それぞれ考察してみましょう。後述しますが、「禁忌」は「侵す」よりも「破る」という表現の方が一般的です。

「禁忌」とは?

「禁忌」は、「きんき」と読みます。「忌む(いむ)」という言葉の連想からか、「きんい」と読む人もいますが、これは誤読です。大きく分けて、以下の2つの意味を持ちます。

  1. 忌み嫌って、慣習的に禁止したり避けたりすること、またそのもの。タブー
  2. 人体に悪影響を及ぼす危険がある薬剤の配合や治療法を避けて行わないようにすること。

1、2ともに科学的な根拠があるものから特に根拠はないが長年の習慣で禁止されているもの、あるいはその線引きがあいまいなもの、と様々なパターンを含みます。

宗教上の禁忌

例えば、イスラム教では豚を食することは禁忌とされています。これは、コーラン(教典)にも書かれていることなので、宗教的な禁忌です。しかし、豚肉はいたみやすいため、イスラム教圏で食べるのは危険だったという背景があった、という説もあります。

「危険な場所には近寄らない」「食あたりをおこした食べ物は避ける」というような生活の知恵が、「禁忌」の源流と言えるでしょう。

「禁忌」の使い方

  • ゾロアスター教では、火葬や土葬は禁忌とされていた。
  • 村の禁忌を破って、森の奥に踏み込んだ少年は、狼に襲われて命を落としてしまった。
  • 消化性潰瘍のある人には、鎮痛消炎剤は禁忌となることがある。
  • ウナギと梅干のような「食べ合わせ」も禁忌と呼ばれることがある。

「侵す」とは?

「おかす」と読む漢字としては、一般的には「犯す」「侵す」「冒す」の3つがあります。語源はすべて同一で、「法律・道徳を破る。悪事を行う」「心や体を害する。女性に乱暴する」「他人の領分を不当に奪う」という意味の「おかす」という言葉です。

「犯す」

漢字で「犯す」と書いた場合、以下のような意味を表します。

  1. そうすれば当然罰せられるようなことをする。
  2. 知らず知らずのうちに、よくない結果を招くことをする。
  3. 不当な危害を加えて、存在・生命の危機に陥らせる。

「犯罪」という言葉があるように、基本的には過ちや罪を「おかす」場合に用いられる漢字です。それぞれの意味ごとに例文を挙げておきます。

【例文】
  1. 法を犯すような行為だけは慎んでほしい。
  2. 若いころ、人の迷惑も考えずにいくつもの愚を犯してしまった。
  3. 戦火の中では、人の物を奪い、女性を犯すような愚行がしばしば行われた。

「侵す」

「侵す」と書いた場合は、「侵略」「不可侵」といった熟語を思い浮かべるとイメージがしやすいでしょう。

  1. 他人の領域に無断で入るなどして、損害を与える。
  2. 他人が持っている権利、利益に圧迫を加えて存在や活動にダメージを与える。
  3. 人の上に立つ存在に不当な侮蔑を加えてその神聖や権威を汚す。
  4. マイナスの自然現象や生理状態が、自由な活動を奪う。

【例文】
  1. 隣国の軍隊が国境を侵して進軍してきた。
  2. 今回の法案は、国民の言論の自由を侵す可能性がある。
  3. 即位したての若い国王は、既に侵すべからざる威厳をその身にまとっていた。
  4. 快活に笑う彼女が不治の病に侵されていると、誰が想像できるだろう。

なお、3や4の意味では「冒す」という漢字を用いる場合もあることを、付け加えておきます。

「冒す」

「冒す」と書いた場合は、「冒険」「冒涜(ぼうとく)」といった熟語を思い浮かべるとよいでしょう。

  1. 危険や困難を覚悟のうえで、あえてする。
  2. 聖域・尊厳などを汚し傷つける。
  3. 他家の姓を名乗る。

【例文】
  1. 勇敢な船長は、風波を冒して出港することを決意した。
  2. 古代エジプトの国王(ファラオ)は、神聖にして冒すべからざるものとされていた。
  3. 長じて、彼は養家の姓を冒すこととなった。

「禁忌を侵す」まとめ

「禁忌をおかす」の漢字表記が上記の3つのうちどれに当てはまるか、なかなか難しい問題です。元々が同一の語源を持つ言葉なので、絶対の正解はないと言えるかも知れません。

一般的には、「定められたことを破る、宗教的な罪をおかす」という意味で「犯す」が使用されていますが、物理的、精神的な意味での「聖域」をおかすという意味で、「侵す」「冒す」も間違いとは言えないでしょう。


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