「ややあって」とは
「ややあって」とは、「しばらくして・少し時間が経って」という意味です。「何らかの基準(物事や行動など)となる時点から、少し時間が経ってからどうなったか」を表現する接続語のような働きをします。
この「ややあって」は、「やや」+「あって」の二語から構成されています。次の項でそれぞれについて見ていきましょう。
「やや」とは
「やや(稍・漸)」は分量や程度を表す副詞ですが、「やや」単独ではその意味を成すことはできません。以下のように、基準となるものと比較した場合に、「少し違いがある・少しずつ変化している」こと表現する場合に用いられます。
- 分量や程度がわずかであるさま…例:「今月の残業時間は先月よりもやや多い」「台風は予想進路よりやや東寄りを進んだ」
- 少しずつ程度が進むさま…例:「川の水位は2時間前よりやや下がった」「日経平均は昨日よりやや上昇して始まった」
「あって」とは
「あって」は、動詞「ある(有る)」の連用形「あり」に接続助詞「て」が付く際に、「り」が「っ」に変化した語です。この場合の「ある」は「時間が経つ」ことを指しています。
「ややあって」の使い方
- 彼はあきらめ顔でふてねをしていたが、ややあって起き上り、部屋を出て行った。
- 私が左足の包帯をとって見せると彼は目を丸くしていたが、ややあって口を開いた。
- インターネットで何かを検索していた彼は、ややあって電話を掛け始めた。
- 数人の友人と出て行った彼女は、ややあって一人で戻ってきた。
- 今朝は寝坊したので急いで出社した。ややあってスマホを忘れてきたことに気づいた。
「ややあって」の類語
「しばらくして」
「しばらくして(暫くして)」は「少し時間が経つた後・少したって」という意味です。副詞「しばらく」+助詞「して」で構成されており、「しばらく(暫く)」は、少しではないが、あまり時間がかからない様子を表します。
「しばらくして」は「しばらくしてから~しよう」のように未来のことに対して使うことができますが、「ややあってから」は未来のことに対して用いることはできません。
【例文】
- いたずらを叱られた犬はベッドの下に隠れていたが、しばらくしてばつが悪そうに出てきた。
- 「サイトへの通信がタイムアウトしました。しばらくしてから再度アクセスして下さい。」と、エラー表示がでた。
「間もなく」
「間もなく(まもなく)」は、「時間がそれほど経っていないようす・じきに」という意味です。「ややあって」は、「少し時間が経ってから~した」のように過去を表しますが、「間もなく」は過去だけでなく「少し経ったら~する(予定だ)」という未来を表す点では異なります。
【例文】
- 生まれて間もなく、仔馬は細い足を震わせながら立ち上がった。
- 間もなく3番線に、大阪行き「のぞみ5号」がまいります。
「程なく」
「程なく(ほどなく)」は、「あまり時間が経たないうちに物事が実現するさま」を指す言葉です。「程なく」は古語の形容詞「程無し(ほどなし)」の連用形で、「時間が経っていない・早い・間がない・若い」などの意味があります。
使用頻度は多くはありませんが、「程なく」は「程なく~するだろう」「程なく~しそうだ」などの形で未来の出来事に対して用いることができます。
【例文】
- 彼はその作品を描き上げると程なく、ヨーロッパ留学に出発した。
- 冷えてきたから、雨は程なく雪になるだろう。
「やや」で始まる言葉
「やや」で始まる言葉はほかにもありますが、「ややあって」の「やや(稍・漸)」とは違うものもあります。言葉の成り立ちを混同しないようにしましょう。
[ややこしい]⇒名詞「ややこ(嬰児)」+接尾辞「しい」
事柄が込み入っている状態を指す言葉です。京言葉の「ややこ」を形容詞化して、子供(赤ちゃん)のように扱いにくいことを表したのが語源となっています。
[ややもすれば]⇒漢字表記:「動もすれば」
「ややもすれば」は「動」の訓読みの一つで、物事がとかくそのような状況になりやすいようす・ともすればという意味です。おもに「ややもすれば誘惑に負ける」のようにネガティブな事柄に対して用いられます。