「合一」の意味
「合一」は「二つのものが一体化する」という意味です。読んで字のごとく、「一つに合わせる」という意味を持つ言葉です。
本来は名詞ですが、単独の単語では、サ行変格活用して「合一する」という動詞としてよく使います。一方、「○○合一」というように、四字熟語の一部として使う例も多く、「○○合一」という形の四字熟語はたくさんあります。
「合一」の使い方
- エックハルトは、自身を無にすることによって神との合一が適うと説いた。
- 驚くべきことに、臆病さと勇敢さが彼の中で完全に合一しているのだ。
「合一」の四字熟語
知行合一
「知行合一」は、「ちぎょうごういつ」「ちこうごういつ」と読みます。王陽明が提唱した言葉です。王陽明は1500年ごろに中国(当時は明)で活躍した儒学者で、陽明学を起こした人物として知られています。
知行合一は陽明学の主要な考え方の一つとして有名です。知識だけを重要視するのではなく、知識と行動が一体化すること、知識に行動が伴うことが重要で、知識と行動は別々に切り離すことができない、という考え方です。この考え方は、幕末の志士たちをはじめ、江戸時代の日本人に大きな影響を与えました。
天人合一
「天人合一」も古代中国の思想・哲学にかかわりのある言葉です。「天」は神や自然を意味し、古代中国の思想においてはとても重要なものでした。
天、すなわち、神や自然の営みと、人間の営みは対立するものでなく、互いに連動し一体化しているという考え方です。
心身合一
「心身合一」は幕末の儒学者、佐藤一斎が提唱した考え方です。人間の心と体は連動していて、心の状態が表情や体に現れることを意味しています。
神人合一
「神人合一」は日本特有の考え方だと言われています。人の魂は本来、カミサマから分かれたものであり、再びカミサマのもとへと帰り、一体化するという考え方です。
「合一」の語源
「合一」という単語そのものの語源ははっきりとはしていません。しかし、上の例を見るように、中国の思想から発生した言葉だと推測できます。現在でも中国で使われている言葉です。
中国には、物事には何事にも光と影、プラスとマイナスがあるという「陰陽思想」という思想があります。プラスとマイナスがそれぞれ存在して、初めて世界は成り立つと考えられていました。そのような思想が「合一」という考え方に大きく影響を与えたと考えられます。
「合一」の隠された意味
対立しあう陰と陽が合わさって世界が成り立つという考え方は「合一」にも反映されています。実は、合一はどんなものでも一体化できる言葉ではありません。
「合一」には「対立すると考えられる二つのものを一体化する」というニュアンスがあるのです。
知識と行動、天と人、神と人、心と体、これらのように対立すると考えられる二つを一体化する言葉として、「合一」は使われています。
「合一」の類義語
「合一」に意味が近い言葉には、「合成」や「合体」があります。「合成」も「合体」も、二つ以上のものを一体化させる、という意味です。
「AとBを合成する」「AとBが合体する」という時は、AとBが合わさって、新しいものを生み出すという意味になります。しかし、「合一」は意味が少し違います。
「AとBが合一する」という時は、「AとBが連動して、まるで一つのもののように動く」という意味になります。一口に「一体化」と言っても、「合成」や「合体」のように、完全に合わさって別のものを生み出す、という意味ではありません。
「合成」「合体」は物質そのものが一体化するのに対し、「合一」はものが持つ性質や働きが一体化する、という違いがあるのです。