「すなわち」の意味
「すなわち」は接続詞、名詞、副詞のそれぞれで意味が異なります。
- 〖接〗(上をうけて更にその意を再び明らかにする言葉)いいかえれば
- 〖接〗(上の条件句の当然の帰結として下の句へつなぐ)しかるときには。そうなるときは
- 〖接〗(前述と後述が全く同じことを表す場合)とりもなおさず。まったく
- 〖名〗その時。即座
- 〖名〗そのころ。当時
- 〖副〗即座に。すぐに。ただちに
- 〖副〗そこで。そうして
「すなわち」を名詞、副詞として使う方法は、古典文学によく見られます。しかし、現代ではほとんどの場合は接続詞として使います。この記事では、接続詞としての「すなわち」について見ていきましょう。
「すなわち」の漢字表記
「すなわち」を表す漢字はたくさん存在しますが、多く使われているのは次の3つです。
- 即ち
- 則ち
- 乃ち
このなかで一番使用頻度が高いのは「即ち」ですから、どの漢字を使うか迷ったときは「即ち」と書くと良いでしょう。なお、「乃ち」の表記を掲載していない辞書もあります。
そのほかに「すなわち」と読む漢字には、「廼ち・便ち・曽ち・輒ち・曾ち・皍ち」などがありますが、用いられるケースは少ないです。
「すなわち」と「すなはち」
古典の授業や古典作品で、「すなはち」という言葉を目にした人も多いでしょう。「すなわち」は、旧仮名遣いでは「すなはち」と書かれていました。意味は「すなわち」と同じですが、接続詞だけでなく、名詞や副詞として用いられていることもあります。
「すなわち」の使い方
「すなわち」は少し固い言葉なので、日常的な会話や文章というよりは、講演や論文などで用いられます。
1の意味:いいかえれば
1の意味の「すなわち」には、「同じものを違う観点から見ると」というニュアンスがあります。この場合の「すなわち」は「つまり」に置き換えられることが特徴の1つです。
例えば、「私の姉の娘、すなわち私の姪っ子」という文章では、「すなわち」の前後は同じ人物です。「すなわち」で接続することで、前者と後者では見方が異なることを表しています。
【例文】
- 彼の働いているチェーン店は大阪・京都・奈良、すなわち関西地方に展開している。
- 明日まで待ってくれたら何とかなる、すなわち今日は無理です。
2の意味:しかるときには
2の「すなわち」は「しかる」(然る:もちろん・当然)という意味があり、「Aなら(ば)、すなわちB」という形が成り立ちます。
例えば、「全く勉強しなければ、すなわち成績は落ちる」は、「全く勉強しなかったら当然成績は落ちる」という意味です。
【例文】
- 給料もらうたびにすぐに散財していれば、すなわち貯金はできない。
- 一晩ぐっすりと眠ることができれば、すなわち疲労回復する。
- 仕事に不真面目であれば、すなわち周囲の信用を失う。
3の意味:とりもなおさず
3の意味の「すなわち」を使う場合、「AすなわちB」は「A=B」であることを表します。例えば、「私は一番面積が広い都道府県、すなわち北海道の出身です」という文章では、「一番広い都道府県」と「北海道」はイコールです。
数学の授業などで「=」を「すなわち」と呼ぶのは、この7の意味に拠ります。
【例文】
- 日本の最西端の島、すなわち与那国島を訪れています。
- 私は今年で喜寿、すなわち77歳になります。
- この間のテストはノーミス、すなわち満点だった。
「すなわち」の類語
「言ってみれば」
「言ってみれば」は「言い換えると」ということですから、1の意味の「すなわち」と同じです。しかし、「A言ってみればB」という文章では、BはAを少し誇張している場合もあります。
【例文】
- 毎日違う作業をするのは苦ではなかった。言ってみれば、毎日気分転換をしているようなものだ。
- 彼女のおかげで試合に勝てた、言ってみれば彼女は救世主よ。
「さしずめ/さしづめ」
「さしずめ/さしづめ」は漢字では「差(し)詰め」と書きます。「すなわち」に類するのは「当てはまる答えを探した結果。いわば」という意味です。
【例文】
- 彼女は私のことを何とも思っていないのだろう。さしずめ荷物持ちと言ったところだ。
- 彼は社長のためにいくつものプランを提案してきた、さしずめわが社のブレーンだ。