「夜明け」とは?
「夜明け」(よあけ)は、大きくわけて下記の三つの意味をもつ言葉です。
- 夜が明けること、また、そのころ。あかつき、明け方、天明。
- 日の出前。江戸時代には日の出前36分、寛政暦では太陽の中心が地平線下の7度21分40秒に達した時間を指した。双方とも、これを時間の起点、明け六(あけむつ)と称した。
- 新しいなにか(おもに時代や文化などを指すことが多い)の始まりとしての比喩。
ここでは1と2をまとめて「気象上の夜明け」、3を「比喩としての夜明け」とし、それぞれの使い方をみていきます。
「夜明け」の時刻と所要時間について
寛政暦の夜明け時刻の定義に通じて、現代日本でも「夜明け時刻」が定められています。ただ、その時刻は季節ごと、観測地点ごとに、それぞれ計算されますので、不変の夜明け時刻は存在しません。
例えば北海道と沖縄では、夜明けの時刻に2時間ほども差があります(同じタイムゾーンですので、「時差」ではありませんが)。いずれにせよこの一瞬の時刻が、気象学上の「夜明け」ということになります。
これに対し、慣例的に使われる1の意味の「夜明け」はもう少し時間の幅が広く、太陽がのぼる直前から直後の時間帯を表します。具体的には、太陽が地平線からのぼり始め、その全体が表れるまでにかかる2分30秒前後(季節で変動)を指します。
「夜明け」の使い方
気象上の「夜明け」の使い方
気象学で言う厳密な「夜明け」はごく短い時間帯ですから、この言葉は状況に照らして使う必要があります。
例えば、「夜明けに、新聞に目を通す」という文章は、新聞を読むには時間がかかるため不自然です。「新聞をとりに外に出たら、ちょうど夜明けだった」はありえる用例です。
とはいえ、日常的には夜明け時刻を厳密に区別して使っている人は少ないでしょう。一般的には、暗い夜空がうっすらと明るんでくるあたりまでを「夜明け」として使っている場合がほとんどです。
【例文】
- 旅に出る前夜、嬉しさで眠れないまま夜明けを迎えてしまった。
- 結婚式の当日、二人は朝陽に誓いの言葉をのべようと、浜辺で夜明けを待っていた。
- 窓をあけると夜空がうっすら白みはじめていて、夜明けなのだと気づいた。
比喩としての「夜明け」の使い方
なんらかの物事を始まりを、太陽がのぼり、あらたな一日が始まることにたとえて、「~の夜明け」と言い表すこともあります。
基本的には、時代、文化、文明、産業など多くの人々や組織などにかかわる大きな転換期に用いる言葉で、個人レベルでの転換期に使うことはほとんどありません。
例えば、社会人としてのスタートの日は、個人にとってはおおいなる人生の転換期ですが、それを「人生の夜明け」と言うのは大仰で不自然といえるでしょう。
【例文】
- 産業革命は、さまざまな面で新たな社会と文明の夜明けにつながった。
- パソコンの登場は、個々人が瞬時に世界とつながる時代の夜明けとなった。
- 自動車産業のあらたな夜明けは、電気自動車の開発によるものだ。
「夜明け」の類語
「明け方」
「明け方」(あけがた)は、夜が明けようとするころ、闇夜が明るくなってくる時間帯を指します。したがって、「夜明け」とほぼ同じ使い方の類語といえます。
しかし、天気予報の用語では、3時から6時の時間帯を意味します。時間で区切ると、季節によって空の明るさは変わりますので、一般的な使い方とは少し異なりますね。
【例文】:うっすらと夜空が白みはじめ、明け方となったとき、鳥がいっせいにさえずり始めた。
「曙」
「曙」(あけぼの)は、夜がほのぼのと明けはじめるころを指す言葉です。古風な言葉ですが、以下に示すように、古典『枕草子』の冒頭文として有名ですね。
【例文】:春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
「暁」
「暁」(あかつき)には、次の二つの意味があります。
- 太陽がのぼる直前のほの明るいあたり。夜明け、明け方。古くは、夜半から夜明けごろまでの時間帯を指した。
- 待ち望んでいたことがかなう、その際。
1は「夜明け」と同義ともされますが、古来の定義の影響で、太陽がのぼりきる手前までというニュアンスが強い言葉です。2は比喩的な表現で、多くの場合は「~の暁に(は)」という使い方をします。
【例文】
- 「暁に旅立つ」と、映画のセリフみたいなことを言って旅に出たいものだ。
- このピアノコンクールに優勝できた暁には、あこがれのウイーンに留学するつもりだ。