「怖い」とは?
「怖い」は、(こわい)と読みます。このように読む漢字は、ほかに「恐い」と「強い」がありますが、この二つについては後述します。
「怖い」という形容詞には、大きくわけて下記の三つの意味があります。いずれの意味においても、自分にとってよくないことや危険が潜んでいそうで不安になる感情を表します。
- それが自分に危害を加えそうで不安である。自分によくないことが起こりそうで、遠ざけたい。
- そのことに悪い結果、恐ろしい結末が予想され、不安で避けたい気持ちである。
- 不思議な能力があるようで、不気味だ。
また、いずれの意味においても予感のみを表しており、実際に危害があるというわけではありません。例えば、ナイフをもった男に追われており怖いと感じていても、その男が実際にナイフで危害を加えるとは確定していないのです。
「怖い」の使い方
「怖い」は、日常的に多く使用されている言葉であり、使い方も難しいものではありません。ただ、「怖い」という一つの言葉の中に含まれた3つの意味の違いを理解するのは難しいこともあります。
ここでは、「怖い」の使い方を3つのパターンに分け、例文を挙げて説明します。その例文群を比較すると、3つの意味の違いが理解しやすいでしょう。
意味1の使い方と例文
危害を加えられそう、よくないことが起こりそう、という意味の「怖い」は、最も一般的に使用されている「怖い」だといえるでしょう。暗闇、怒ってばかりの人、地震や雷、ホラー映画等、それぞれ種類も予感の質も様々です。
つまり、わかりやすい恐ろしさに、意味1の「怖い」を使います。子供が「怖いよ!」というように、シンプルに使える「怖い」です。
【例文】
- この夜道の先に墓地があるの。なんだか怖くて、一人では歩きたくないわ。
- 大地震を経験したので、ちょっとした揺れでも怖くて飛び上がってしまう。
- ジェットコースターのような怖いものは、お金をもらっても乗りたくないね。
- 深夜、幽霊特集の番組などを見ていると、うしろになにかいそうで怖くなる。
意味2の使い方と例文
悪い結果に対する予感からの「怖い」は、幼児期を脱して覚えはじめる「怖い」でもあります。経験を積み、こんなことをすると危ないかな、大変なことが起きるかな、という危険予知をするときに使うのが、意味2の「怖い」です。
【例文】
- おかあさんを怒らせるとあとが怖いから、塾をさぼるのはやめておこう。
- ギャンブルは怖いよ。あっという間に大金を失ってしまうぞ。
- いまの社長に逆らうのは怖いけれど、このままでは会社が私物化されてしまう。
意味3の使い方と例文
不思議なことに対する不気味さという「怖い」は、使い方が一番難しいかもしれません。たとえば、「窮鼠猫を噛む」のように、追い詰められたものが突然ありえない反撃をするような怖さや、過去の記憶が自分に及ぼしてくる怖さなどを表すときに使います。
【例文】
- トラウマとは怖いもので、安全な場所にいても、突然リアルに事故の記憶が蘇るんだ。
- 悪癖はどうあがいても抜け出せないようで、先のことを思うととても怖い。
「怖い」の類語
「恐ろしい」
「恐ろしい」には「危険を感じて不安に思うこと」という意味があります。危険を感じるという点では「怖い」と似ていますが、「怖い」は口語的、「恐ろしい」は文語的な表現です。また、「怖い」は主観的、「恐ろしい」は客観的な危険を表すと説明している辞書もあります。
そのため、新聞などでは「怖い事故」ではなく、「恐ろしい事故」という表現を使うのです。また、「怖いもの見たさ」とは言いますが、「恐ろしいもの見たさ」とは言いません。これは、その不安が主観に基づくものだからです。
なお、「恐ろしい」には「程度が甚だしい」という意味もあります。これはポジティブな意味でもネガティブな意味でも使える形容詞です。
【例文】
- 怒りに燃える彼の表情はとても恐ろしかった。
- この町は、5年前の恐ろしい災害からようやく復興を遂げた。
「不穏」
「不穏(ふおん)」とは、「穏やかでないこと。危険や危機をはらんでいること」を表す名詞、または形容動詞です。「不穏」は、おもに、情勢や状況に対して使います。一方で「怖い」は、おもに、物事や人に用いられます。
【例文】
- 殺気だった人々が街に集結し、あたりに不穏な空気が漂っていた。
- 外出が禁じられた町は、不穏なほどに閑散としていた。
「物騒」
「物騒(ぶっそう)」にはいくつかの意味がありますが、現代日本語で用いられているのは「よくないことが起こりそうな危険な予感がある」という意味です。「物騒な世の中」「物騒なもの(武器など)」のように、様子にも、人や物事に対しても使います。
【例文】
- 一般市民が銃で武装するという物騒な国もある。
- このあたりは夜は物騒だから、あまり出歩かない方が良い。
「恐い」と「強い」
「こわい」という言葉には「怖い」以外に「恐い」と「強い」があります。これらには違いがあるでしょうか。
「恐い」は「怖い」と同じ意味です。主観的な「こわい」には「怖い」、客観的な「こわい」には「恐い」を使うという説もありますが、実際には根拠がないと言われています。
ただ、「恐い」とは異なり、「怖い」は常用漢字であるため、新聞等のメディア記事や教育、公的機関の文書などはすべて「怖い」で統一されています。
また、「強い」は、上記二つとは異なる意味を持っています。頑固である様子、かたくて扱いづらい様子、などをあらわします。「御飯が冷えて強くなった」などがその例です。