「恐ろしい」とは
「恐(おそ)ろしい」は、こわい、こわがる、心配する、おそれかしこまるという意味の古語の動詞「恐る」が形容詞化した「おそろし」の終止形で、以下のような意味があります。
- 危険や恐怖を感じて、不安になること。
- 将来のことに対して警戒心を持ったり、避けようと感じること。
- 物事の程度が並外れていること。
「恐」の字義
「恐」は、音読み「キョウ」、訓読み「おそ-れる。おそ-ろしい。こわ-い」と読み、①おそれる、こわがる、おそろしい、こわい。 ②おそれいる、つつしむ、かしこまる。 ③おどすといった意味があります。
①の意味では、「恐怖。恐慌」 ②の意味では、「恐縮。恐悦(きょうえつ:うれしいこと)」 の意味で③は、「恐喝(きょうかつ)」などの言葉もあります。
「恐ろしい」の使い方
上記のように、「恐ろしい」には、3つの意味があることから、それぞれの意味ごとに使い方をご紹介します。
1の意味「不安」
インターネットやテレビ、新聞などでは「恐ろしい」ニュースが毎日のように報じられています。この「恐ろしい」という感情は、1の意味や2の意味で用いられる「恐ろしい」に当たります。
また、「恐ろしい」という感情は生物的本能に根差したもので、おそらく誰にでもあるものですが、その感じ方や感じる内容には個人差があります。
【例文】
- 恐ろしい夢を見てうなされていたらしく、目覚めたら汗びっしょりだった。
- 殺人事件の犯人が近くに潜んでいる可能性があるので戸締りをしっかりするようにと広報車が回っている。恐ろしいことだ。
- 北海道を旅行中、ヒグマに食べ物の入った荷物を奪われるという恐ろしい目にあったことがある。
2の意味「警戒心など」
人は、将来に不安要素があると心配したり、警戒したりします。そのようなときに「恐ろしい」という表現を使うことがあります。
【例文】
- ニュースで、マダニの感染症が恐ろしいと聞いて、しばらく趣味の野山の散策を控えている。
- お金がなくなって生活が破綻することは恐ろしい。そうならないように努力しよう。
- ニュースで戦争や内戦の様子を見るたびに、戦争は恐ろしいと思う。
3の意味「物事の程度が並外れていること」
あまりにもスケールの大きなこととか予想外のことなど、ちょっと言葉では説明できないようなことに遭遇すると人は「恐ろしい」という形容をすることがあります。
【例文】
- 今年の夏は熱中症で死亡する人が続出するほど恐ろしい暑さが続いている。
- 逃走する犯人を取り逃がした刑事が、恐ろしく足の速い奴だったと言っていた。
- 禁煙して1年になるが、気が付くとたばこを探してポケットを探っている。習慣とは恐ろしいものだ。
「恐ろしい」の類語
「怖い/恐い」
「怖い/恐い(こわい)」は、身の危険などの悪いことを予測して、不安でそれを避けようとする気持ちを表す言葉です。「恐ろしい」は、どちらかといえば客観的に危険な物事を表す傾向がありますが、「怖い/恐い」は、主観的な恐怖心を表しています。
すなわち、客観的に「恐ろしい」物事に遭遇しても、それを「怖い」と感じない人もいるということです。
【例文】
- 帰宅すると夫が怖い顔をしてテレビのニュースを見ていた。
- 友人が株で失敗して破産した。投資は怖いと思った。
「気味が悪い」
「気味(きみ)が悪い」は、何となく恐ろしく感じたり、不快に感じたりすることです。「気味」は、物事から受ける感じのことですが、風邪気味のように、そういう傾向があるという意味もあります。
【例文】
- この辺の道には街灯が少ないので、夜歩くのは気味が悪い。
- 街中で気味が悪い目をした男がふらついていたので、避けて通った。
「身の毛がよだつ」
「身の毛がよだつ」は、からだの毛が逆立つぐらいに恐ろしく感じること、ぞっとすることを表現する慣用句です。「身の毛もよだつ」とも言います。「よだつ」は、「弥立つ」と書き、寒さ・恐怖などでぞっとしてからだの毛が立つことを意味します。
【例文】
- 裁判員になって、身の毛が(も)よだつ恐ろしい事件を担当することになり、今から気が重い。
- ホラー映画を見ていて、身の毛が(も)よだつ場面で思わず顔を背けた。
「戦々恐々」
「戦々恐々(せんせんきょうきょう)」は、先のことにおびえて、びくびくすることやおそれつつしむさまのことです。本来は「戦戦兢兢」と書き、「戦々恐々」は代用字です。
「戦戦」はおそれおののくこと、「兢兢」は、恐れて慎むさまのことで、本来の意味は、おそれつつしみ、注意して慎重に行動するようにという戒めの言葉として使われていました。
【例文】
- 緊急事態宣言が解除されて、戦々恐々とした気持ちで繁華街に行ってみた。
- 大型台風が接近しているというニュースを戦々恐々とした思いで聞いていた。