「当惑」の意味
「当惑」(とうわく)とは、「何か事に当たって処置に迷いとまどうこと」や、「思案がつきて途方に暮れること」という意味の言葉です。
まずは字面通りに、事に「当」たって「惑(まど)う」と意味を覚えてよいでしょう。「惑う」は、途方に暮れたり、思い悩んだり、うろたえ慌てたりすることを表します。
「当惑」の使い方
「当惑」を使う際のポイントは、その字義上、「事に当たって…」という前段が存在する点です。つまり、「惑う」ような「事」が目の前に急に立ちはだかる、何かしようとしたところその「事」に当たってして惑う、というかたちで使います。
必然的に、「急なアクシデントに当惑する」や「思いがけない事態に当惑する」のように、「突然・急・思いがけず」といった意外性の文脈で使用されることが多いため、覚えておきましょう。
また、「事に当たる」ということは、自分がその事柄に少なからずコミット(関係)している、当事者として(正面から)その事態に出くわしている最中、という主体性やリアルタイム性のニュアンスが含まれる点も「当惑」という言葉の特徴です。
例文
- カーナビに従って運転していたはずなのに、いきなり袋小路に入り込んでしまい、当惑している。
- 思いがけない人物が家を訪ねてきて、彼は当惑した。
- 「詳細はホームページで」と言われても、パソコンに詳しくない私はいつも当惑するばかりだ。
- 身に覚えのない容疑をかけられた少年は、当惑した様子で顔を伏せていた。(「当惑顔」という表現もある)
「当惑」の英語表現
「当惑する(させる)」という意味の英単語は、下記のようにいくつか挙げられます。
- embarrass(~をまごつかせる)
- confuse(困惑させる、面食らわせる)
- annoy(悩ませる、心配する)
- perplex(まごつかせる、解決できないと思われるほどの不安や心配)
- puzzle(頭を悩ませる)
- disturb(乱す、妨害する)
- fog(途方に暮れさせる)
- lost(途方にくれた)
いくつも単語がありますが、「当惑」と一対一で覚えるというよりは、「当惑」させた感情と、その原因を具体化するイメージを持つと少し使い分けがしやすくなるかもしれません。
例えば、同じ「当惑」でも「まごつかせて恥ずかしい思いをさせる(embarrass)」なのか、「心配させる(annoy)」なのか、「パズルなどの難問で頭を悩ませる(puzzle)」のか、「霧に包まれるような感じ(fog)」なのか、という具合です。
例文
- She was embarrassed when he asked her age.(彼に年齢を聞かれたとき、彼女は当惑した)※年齢を聞かれた恥ずかしさの当惑なので、「embarrass」が適当
- I was confused with her opinion.(彼女の意見に当惑した)
- He was perplexed when his best friend reneged on his promise.(親友に約束を反故にされて、彼は当惑した)
- My mother was disturbed to hear the news.(その知らせを聞いて、母は当惑した)
これらの例文の通り、「当惑する」と言いたい場合でも、「何かに当惑させられる」という受身形(be ~ed)での使用を基本として覚えておきましょう。
「当惑」と「困惑」の違い
「当惑」と意味がよく似た言葉に「困惑」があります。どちらも、「どうしていいかわからない」という「惑う」ニュアンスは同じですが、「困惑」には「事に当たって」という前提づけがありません。
つまり、使い分けを意識するとしたら、「今まさに、目の前で引き起こされたことについてどうしていいかわからない」という場合には「当惑」を、ただ「困って、どうしていいかわからない」という場合は「困惑」を使えば良いでしょう。
ただ、実際には「当惑」する事象は「困惑」する事象であることも多く、本当に微妙な違いです。「今まさに、事に当たって困惑した」場合、「当惑」と置き換えるとこの語ならではの特徴が出せるかもしれません。