「理不尽」の意味
「理不尽」(りふじん)とは、「道理に合わないこと。無理無体(むりむたい)」という意味の言葉です。
「理」が「不尽」である、つまり「道理」や「条理」などが「十分に尽くされていないこと」を示す言葉であり、物事の是非や、道理に適(かな)っているか適っていないかがはっきり分かたれていない様子を指します。
一切の「理」(ことわり)が存在しない、もしくは存在していても適切に適用されない「理不尽」な状況は、人間に多大なストレスを与えることが多く、受け入れがたい苦痛の代名詞としても使われることがあります。
「理不尽」の使い方
「理不尽」は、例えば「理不尽な目に遭う」や「理不尽な気持ち」、その他「理不尽な〇〇(出来事)」といったかたちで、そこに道理がなく、とてもそれを納得できないという心情を含めて使います。
世の中はあらかじめ完成品としてそこに存在するわけではなく、どの人間も何かしらの欠点や不完全性を抱えています。また、「人はなぜ生き、そして死ぬのか」といった、万人に納得可能な「理」(理由、論理など)が存在しない「問い」も数多くあります。
そのような観点では、この世はそもそも理不尽であり、「理」によって言い尽くせることのほうが少ないと言えるかもしれません。実際、身の回りの人間関係や、世の中の慣習、突然起こる自然災害などに理不尽さを覚える人は多いでしょう。
軽いニュアンスで使われることもある
人によっては、自分から歩み寄って解決できる可能性がある問題を、ただ「理不尽」という言葉だけ貼り付けて割り切ってしまう(または放置する)ケースもないわけではありません。
そこに「理」がないのであれば、「理」を通す努力も時には必要です。物の道理ではなく、自分個人の感情的定規だけを基準として「理不尽」と言わないよう留意したほうがいいでしょう。
例文
- 人員も増やさず、必要な機材も揃えず、社員教育も行わず、具体案も示さず、「売り上げを倍にしろ」という社長の命令が、理不尽でなくて何だろうか。
- 60年代のアメリカには、異人種に対する理不尽な差別が当然のように横行していた。
- なぜ、あんなに善良で人から好かれていた母が交通事故で死ななければならなかったのか。悪人は世にのさばっているというのに。この世は誠に理不尽だ。
- 彼女に心酔した男は、「どのような理不尽な命令にも従います」と膝を折って誓った。
「理不尽」の類語
不条理
「不条理」(ふじょうり)とは、「条理がないこと」、すなわち「道理に反すること」や「物事に法則性がない、不合理なこと」を意味する言葉です。
特に、実存主義の用語として、「人生に意義を見出すことができない絶望的状況」を指す言葉として、思想や文学の世界でも使われています(代表的作家はアルベール・カミュなど)。
【例文】:大学を卒業し、社会に出てはじめて、世の中が不条理だらけだと実感した。
不当
「不当」(ふとう)とは、「道理にはずれたこと」の意味で、社会的には「不法」や「不正」に近い意味でも使われます。
例えば、「不当解雇」と言った場合、はっきりした解雇要件を満たしていないのに一方的な解雇を言い渡された、「理不尽な解雇」と言い換えることができるでしょう。
【例文】:相手がどれだけ偉い人間だろうとも、不当な要求には従いません。
無理筋・筋が違う・筋が通らない
「道理に合わない」ことや「目指す(べき)方向や判断などが間違っている」ことを、一本のまっすぐな筋が通らないことにたとえて、「無理筋」「筋違い」「筋が通らない」などと表現します。
【例文】:節制しろと社員には通達しておきながら、自分は豪邸に住み、新しい高級車を買うのは、筋が通らない。