「形骸化」とは?意味や使い方をご紹介

「形骸化」(けいがいか)の意味をご存知でしょうか。少々難しい言葉ですので、馴染みがないという方も多いかもしれません。しかし、いざ覚えてみると、世の中に「形骸化」したものは大変多く見つかることでしょう。ここでは、「形骸化」の意味や使い方を類語も含めご紹介します。

目次

  1. 「形骸化」の意味
  2. 「形骸化」の使い方
  3. 「形骸化」の類語
  4. 物事が「形骸化」する理由

「形骸化」の意味

「形骸化」(けいがいか)とは、「中身が失われて、外形だけが残っている状態になること」という意味の言葉です。

「形骸」とは、「からだ、肉体、むくろ。特に、生命や精神のないからだ」や「建物などのさらされた骨組み」のことです。ここから転じて、「外から見える形はあれど、実体がない」という意味も持つようになりました。

「骸骨」(がいこつ)の「骸」に「形」ですから、肉や皮が落ち、さらされた骨ばかりとなった、無残な姿を思い浮かべれば、意味が取りやすくなるかもしれません。

「形骸化」の使い方

「形骸化」は、実際の物で例えるのであれば、蝉(せみ)などが脱皮して抜け殻だけが残るようなもの、といえます。しかし、この言葉が物理的なものに対して使われるケースはあまり多くありません。

「形骸化」は、多くの場合、何らかのルール・制度・決まり事などに対し、「名前や枠組みとしては存在するものの、実質が伴っておらず、誰もそれを有用と考えず、活用されない」というさまを比喩的に表すのに使用されます。

例えば、学校で「廊下を走ってはならない」というルールが周知されたとします。しかし、誰もそれを守らず、教師や自治組織による注意や再発防止策までもおざなりになっていたとしたら、そのルールは「形骸化」してしまったといえるでしょう。

例文

  • 安全のために設けられたはずの「作業工程チェックリスト」は形骸化してしまっており、皆、惰性(だせい)でチェックを入れるだけになっている。
  • 「民族の純潔を守る」という戦争の大義名分は、戦況が進むにつれ次第に形骸化していった。
  • 当時、鳴り物入りで打ち立てられた「〇〇条例」は、今では時代にそぐわないために形骸化している。しかし、憲法解釈の問題を孕(はら)むために未だに廃止できないでいる。
  • ルールが形骸化していることは、そのルールに従わなくて良い理由にはならない。自分でルールを変える努力をするべきだ。

「形骸化」の類語

有名無実化

「有名無実化」(ゆうめいむじつか)とは、読んで字のごとく、名はあるが実がないこと、名ばかりで実質が伴わないこと、もしくは評判と実際がまるで異なることを言います。

「形骸化」に比べると、「名」そのものはよく知られているというニュアンスが少しだけ異なります。

【例文】:疑わしきは罰せず、という法の原則はこの国では有名無実化している。

陳腐化

「陳腐化」(ちんぷか)とは、「古くなって腐ること」「古臭く、ありふれていて平凡になること」という意味の言葉です。物事が「形骸化」してしまう理由の中には、「陳腐化」が少なくないウェイトを占めるでしょう。

ただ、「技術の進歩についていけず、製品の性能が陳腐化する」のように、物理的にどうしても古くなってしまうというニュアンスは、「形骸化」とは異なります。

【例文】:かつて一世を風靡した斬新な経済理論も、今ではすっかり使い古されて陳腐化している。

お決まり

「お決まり」とは、「いつも決まってそうすること」を皮肉的に言う言葉です。「お定(さだ)まり」とも言います。

「お決まり」には、意思や熟考の結果としてそうするのではなく、「うんざりするほどいつもと同じようにする」というニュアンスが込められており、そのように実行される物事は「形骸化」したものであることが多いでしょう。

【例文】:この時間のドラマは、愛憎の末の殺人という流れがお決まりのパターンになっている。

物事が「形骸化」する理由

「形骸化」という言葉をあらためて意識してみると、あなたの身の回りにも、さまざまに「形骸化」した物事(特に、決まり事など)が存在することに気づかれるのではないでしょうか。「こうしよう」と誰かと決めたことも、なかなか守られないものです。

人間はさまざまな体験の中に生きており、その都度、自他を律するルールを更新し続けます。そのため、法律のような、多くの人の合意や努力の結果として成立したルールでさえ、その寿命は永遠ではなく、いずれは形骸化してしまうのです。

つまり、物事が形骸化してしまうこと、それ自体は必然であり、善でも悪でもありません。大切なのは、形骸化してしまっては困る物事をいかに更新し続け、哀れな形骸とならぬよう実体を吹き込み続けるかです。

物事が形骸化してしまっていることを嘆いたり、批判したりする前に、今必要な「生きた形」をそこに作りだそうとする取り組みも、忘れないでおきましょう。


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