「主体性」の意味
「主体性」(しゅたいせい)とは、ある活動や思考などをなす時、その主体となって働きかけるさま、そのような性質・傾向のことです。
言い換えれば、人が何事かを為(な)すにあたって、他のもの(他人の意見や外部の基準など)によって導かれるのではなく、自己の純粋な立場においてそれを行うこと、そうした傾向を備えることが「主体性」です。
社会一般において、他人の指示・命令によらず、自己の意思を持って思考し・行動する「主体性」は広く求められ、歓迎される態度です。また、主体性を持つ態度のことを、「主体的」ともいいます。
「主体性」の使い方
「主体性」は、主に「主体性のある/なし」「主体性を持って行動する」「彼の主体性を尊重する」といったかたちで、ある者(集団である場合もある)がその者自身の純粋な意思や動機を持つこと/持たないことを指して使います。
多くの場合、「主体性」という言葉そのものに前向きな意味が込められ、自ら率先して事態に臨み、その事態の中心に自己を投げ込み、主たる存在となって周囲に働きかけていく、そのような積極的なニュアンスを表現します。
しかし、厳密なところでいうと、他人の影響が一切存在しない「主体」は存在しないかもしれません。そうした側面から、「主体性」は確固たる特性というよりは、あくまでも「そのような傾向」や、「それが欠如していること」という文脈で使用される例が多いです。
例文
- 〇〇くんは、自ら生徒会長選挙に立候補し、数々の校内改善案を提出するなど、類まれな主体性を持った人物として注目を集めた。
- 彼は他人に何か言われただけですぐに意見を変えてしまう、主体性のない人間だとみなされていた。
- 今勤めている会社をやめ、独立したいと考えている友人を危うく感じたが、一番の親友として、彼の主体性を尊重したかった。
- 何かといえばすぐ隣国の顔色をうかがう。この国の主体性はいったいどこにあるのだろうか。
「主体性」の英語表現
「主体性」を表現する英単語はいくつかあります。
「identity」
「identity」(アイデンティティ、自己統一性)とは、その者がその者であるということの(ある程度)確かな一貫性や統一性が、自他ともに認められていることを言います。
ある人に「主体性」があるということは、同時にその人の「identity」が確立されていると言うこともできるでしょう。ただ、「個性」や「同一性」と訳されることも多く、日本語の「主体性」のような積極的なニュアンスは含まれない場合もあります。
【例文】
- After repeated warnings and reprimands, he lost his identity.(度重なる注意と叱責を受けて、彼は主体性を失った)
- Everything he thought was his own identity was just a gift from his father.(彼が自分の主体性だと思っていたものは、すべて父親からの受け売りにすぎなかった)
「independence」
「independence」とは、「独立、自立」の意味です。「depend」(依存する)を「in-」で否定しており、他の者に頼ることなく単独で成立することが本義ですので、他者に依存しない「主体性」の意味合いに近いでしょう。
しかし、文脈によっては「国家の独立」など大仰なニュアンスが出たり、「経済的自立」など主体性とは少し違うニュアンスが出る点に留意してください。
【例文】
- Your independence is really admirable.(君の主体性〔独立心〕はじつに立派です)
- They have a strong sense of independence.(彼らは強い主体性〔自立心〕を持っている)
「initiative」
「initiative」とは、日本語でも「イニシアチブ」というカタカナ語として使われ、主に「主導権」と訳される言葉です。他に、率先、独創力、先導、開始などの意味もあり、積極性のニュアンスを含む「主体性」の意味にかなり近いといえます。
「主体性を持って行動する」など、行為につながる主体の動きや、その動機付けなどについて表現したい場合には、この「initiative」が第一候補として挙がるでしょう。
【例文】
- We can't hire someone who lacks initiative as a leader.(主体性に欠ける人物を、リーダーとして採用することはできません)
- Please take initiative in your work.(どうか主体性を持って仕事に臨んでください)