「着想」の意味
「着想」(ちゃくそう)とは、仕事や計画などをやり遂げる際に取っ掛かりとなる考えをいいます。「着」はいきつく、たどりつくこと、「想」は思い巡らすことをいいます。
「着想」の使い方
「着想」は何かを作る時、業務に向かう時に完成させるもととなるアイディアを表す際に使います。例えば、うまくいくためのヒントや工夫のようなもの、ちょっとした思いつきなどが頭の中にひらめくことが挙げられます。
使い方としては「着想を得る」(よい考えを思いつく)「着想が湧く」(いろいろな考えが湧き出てくる)「良い着想」(良い考え)といった例があります。
「着想」の例文
- 小さめサイズのスリッパを履いたことに着想を得て、背筋が伸びるダイエットスリッパが発明されたそうだ。
- うちの祖父は自宅に余っていた大量のストローとアクリルビーズに着想が湧き、糸を通してのれんを作っていた。
- 論文を書く前に先生に相談したところ、「良い着想だね」と言われた。
「着想」の類語:着意
「着意」(ちゃくい)は何らかのことを思いつくこと、もしくは、その思いつき自体をいいます。他に、心に留めるよう気をつけることも表しますが、「着想」の類語と考えるなら前者の意味に近いです。
【例文】:氷のうが着意となって、手ぬぐいに保冷剤を入れこんで首に巻いて冷やすと涼しくなるのではと考えた。
クラシック音楽:「着想」により作った曲
具体的に「着想」の意味を説明しようとしても分かりにくいかもしれません。こちらではクラシック音楽の作品を元に、着想を得て作曲した例を紹介します。
リヒャルト・シュトラウス:妻から着想
リヒャルト・ゲオルク・シュトラウスはドイツの作曲家です。彼にはソプラノ歌手のパウリーネという奥さんがいましたが、非常に激しい性格で口やかましいと評判でした。
作曲家のマーラーは、自分の妻への手紙に「夫人の性格に辟易した。シュトラウスもぐったりしていた。」といった内容を記しています。
そのパウリーネ夫人に「着想を得た」シュトラウスは、彼女をモデルにして何曲か作曲しています。
- オペラ『インテルメッツォ』(指揮者の妻で嫉妬深い)
- 『家庭交響曲』(子供が泣くくらいの激しい夫婦喧嘩をする)
- オペラ『影のない女』(登場人物のうち、口うるさい「染め物師の妻」のモデル)
ただし、近年の研究では、夫人はシュトラウスを叱咤激励して良い曲を作るように一生懸命だったことが分かっています。モデルとなった作品でも、最終的に夫と仲直りする一面もあります。一見「鬼嫁」ではあっても、本当は夫に尽くす良い妻だったのかもしれません。
セルゲイ・ラフマニノフ:シューベルトから着想
セルゲイ・ヴァシリエヴィチ・ラフマニノフはロシアの作曲家で指揮者及び、優れたピアニストとして有名です。彼は、シューベルトの『楽興の時』から着想を得て、同じ6曲編成のピアノ曲集『6つの楽興の時』を作曲します。
本家の『楽興の時』と異なる点は、かなり難しい技巧が用いられていること、穏やかな曲調ではなく、短調で激しく重々しい曲が主であることなどが挙げられます。
実は『6つの楽興の時』ができたきっかけは、ラフマニノフが電車の中でお金を盗まれたからだといわれています。生活費のために切羽詰まって、交響曲の作曲を中断して大急ぎで書かれたということです。