「ヘタレ」の意味とは?
「ヘタレ」は俗語で、「へたれ」「ヘタれ」と表記されることもあります。「ヘタレ」は、おもに、意気地がなく弱々しい人、へこたれたり腰が引けている様子という意味です。
また、使用頻度は低いですが、刃物が切れなくなるといった、性能や機能が低下しているさまを指す場合もあります。
「ヘタレ」の使い方
他人に用いる「ヘタレ」
バラエティ番組などでは、バンジージャンプなど度胸試しの企画で怖じ気づいているタレントを指して、司会者が「ヘタレ」といじる(笑いを取る)場面を見たことがあるかもしれませんね。
しかし、「ヘタレ」は弱腰な人や様子をあざ笑ったり、侮蔑するときに用いられる言葉です。お笑い番組の中では芸の一部としてとらえられるでしょうが、日常会話で他人に対して使う際には注意が必要です。
なお、「ヘタレ」は「○○はヘタレだ」のような用法のほかに、「ヘタレ野郎」のように名詞に付くこともあります。
【例文】
- 彼とお化け屋敷に入ったら私を置いてさっさと逃げた。あんなにヘタレだとは思わなかった。
- 『ドラえもん』の「のび太」は普段はヘタレキャラで、ドラえもんに頼りっぱなしだ。
自分に用いる「ヘタレ」
近頃は自分に対して「ヘタレ」を用いることがあります。これは自虐や謙遜の表現なので、気が弱いというよりは、冴えない・取るに足らないといった意味合いであることが多いようです。
【例文】
- 私のようなヘタレには、とてもそんな大役は務まらない。
- ヘタレ絵師(イラストの描き手)だが、作品を見てもらえるのはやっぱり嬉しい。
物に用いる「ヘタレ」
物に対して「ヘタレ」と言う場合は、「このヘタレ包丁は研ぎに出さねばならない」のように使います。これは性能や機能が低下しているという意味ですが、上述のとおり、現在ではあまり用いる機会はありません。
「ヘタレ」の語源
ここでは、「ヘタレ」の語源として有力とされる2つの説を紹介します。
語源①「屁垂れ」
「屁垂れ」(へたれ)は、昭和初期から芸人が楽屋内で使っていた言葉です。子供や半人前を指し、一人前になり切れない芸人をからかうときに使っていました。
「屁垂れ」が子供という意味を持つのは、「小便垂れ」(しょうべんたれ)や「洟垂れ」(はなたれ)と同じ理由です。「屁」「小便」「鼻水」を垂れ流す様子からは、幼い子供の行動がイメージできますね。
この楽屋言葉はテレビ番組などでも用いられるようになり、やがて広く知られるようになりました。その過程で、弱腰な性格や様子を嘲笑する言葉に変化したというのが「ヘタレ」の語源の説のひとつです。
語源②「へたる」
「へたる」は、①尻をベッタリとつけて座る・尻餅をつく、②元気がなくなる・疲れて倒れる、③古びてダメになる・もともとの性能や機能が衰える、という意味の動詞です。
この「へたる」が変化して「ヘタレ」となり、意味②から弱々しい人やそのような様子を表すようになったとする説もあります。
「ヘタレ」の類語(俗語表現)
ここでは、意気地がなく弱々しい人、へこたれたり腰が引けている様子という意味の「ヘタレ」に類する俗語を紹介します。
「チキン」
「チキン」(英語:chicken)は、アメリカ発祥のスラングで、臆病者や腰抜けという意味です。本来は「ひよこ」や「鶏肉」を指す「chicken」がこのようなスラングとして使われるようになった理由には、次の2つの説があります。
ひとつは、「ひよこ」は親鳥に比べてひ弱な存在で、落ち着きなく周囲をうかがう様子が臆病な印象を与えるからという説。もうひとつは、恐怖を感じた時に人の肌に出るブツブツが、羽をむしった鶏の肌と似ていることから、鶏が臆病者の例えとされたという説です。
【例文】
- クラスのみんなは彼をチキンと言うが、気が優しいだけだと思う。
- ホラー映画を一人で見られないと白状したら「チキン野郎」と馬鹿にされた。
「びびり/ビビり/ビビリ」
「びびり/ビビり/ビビリ」は、物怖じ(ものおじ)している様子、または、おどおどしている人を指す名詞です。こちらも「ヘタレ」とよく似ていますね。「びびり」は、怖気づくなどの意味を持つ動詞「びびる」から派生しています。
「びびる」の語源にも2つの説があります。ひとつは、「びび」は大地や物が振動する擬音語であることから、大きな音に怯える様子を表すという説。もうひとつは、不安や恐怖に怯えるという意味の「びくびくする」を縮めたという説です。
【例文】
- うちの猫はびびりなので、来客中は絶対に姿を見せない。
- 私が怪談番組を見始めると、びびりな弟はそそくさと居間を出ていく。