「痴れ者」とは?意味や使い方をご紹介

皆さんは「痴れ者」という言葉を正しく読めるでしょうか。愚痴、音痴など「ち」と読むことが多い「痴」ですが、「痴れ者」は「しれもの」と読みます。現代の日常生活ではあまり使われない言葉かもしれません。今回は、「痴れ者」の意味や使い方をご紹介します。

目次

  1. 「痴れ者」とは
  2. 「愚か」とは
  3. 「痴れ者」の例文と使い方
  4. 「痴れ者」の類語
  5. 「者」を含む熟語

「痴れ者」とは

「痴れ者(しれもの)」とは、「ばか者、おろか者」という意味の言葉です。また、「一つのことに心を打ちこんで夢中になっている人」という意味もあります。

もともと、「痴」という漢字には「おろか、頭がにぶい」「色欲に迷う」「物事に執着して夢中になる」という意味があります。本が好きで四六時中読書しているような人を「本の虫」と表しますが、「書痴(しょち)」という言い方もあります。

谷崎潤一郎の有名な作品に、「痴人の愛」というものがあります。「痴人」は、「痴れ者」と同義です。少女を見初め妻にし、やがてその妻の言いなりになってしまう男性の物語ですが、まさに「痴」の三つの意味が表現されています。

「愚か」とは

そもそも、「愚か」とは具体的にどのような様子をさすのでしょうか。本来、「愚か」は「認知・認識が不十分なさま」が原義でした。「おろそか・なおざり・並一通り(なみひととおり:ごく普通であること)・人間関係が疎遠・未熟・劣っている・頭の働きがにぶい」など、広義に使われていました。

やがて、「おろそか・なおざり・並一通り」の意味は「おろそか」が担うようになり、現代では主に「頭の働きがにぶい・知恵や思慮の足りないさま」という意味で使われるようになりました。

「痴れ者」の例文と使い方

  1. 敵は目前に迫っているというのに悠長に水など飲むな、この痴れ者が!
  2. 彼の無能さにはほとほと呆れた。あまり言いたくないが彼は痴れ者だ。
  3. 彼こそまさに風流(ふうりゅう:俗世間を離れた優雅な趣味)の痴れ者だ。

1の例文は、現代の日常ではなく、時代劇などで使われるセリフをイメージしています。皆さんも、テレビや映画などで耳にしたことがあるかもしれませんね。

1と2の例文は、相手に対してネガティブな感情を抱いていることがわかります。しかし、3のように、何かに打ち込んでいる人へ尊敬の意味を込めて「痴れ者」と使われることもあります。

「痴れ者」の類語

「ばか」や「愚か」という言葉は、相手にも自分にもできれば使いたくないような言葉かもしれません。しかし、「痴れ者」と似た意味の言葉は数多くあります。ここでは、その中でも普段目にしないような珍しいものをご紹介します。
 

  • 空け者(うつけもの):中がからになっているということから、「ぼんやりしている人」「愚か者」という意味になりました。
 
  • 昼行灯(ひるあんどん):ぼんやりしている人や気の利かない人をあざけって言う言葉です。明かりは暗いところで役に立つものなのに、昼間にともっているのはまぬけだ、ということが由来です。
 
  • 抜け作(ぬけさく):俗語です。まぬけで愚鈍な者を、人名めかしてあざけって言う言葉です。
 
  • 表六玉(ひょうろくだま):「表六」ともいいます。こちらも俗語で、まぬけな人をののしって言う言葉です。

「者」を含む熟語

「痴れ者」の「者」は、人をさして言う言葉です。ここでは、「者」を使った言葉をご紹介します。ちなみに、「者」は一般的に自分や目下の人をさして言いますので、上司など目上の人に使わないよう注意しましょう。
 

  • 切れ者:物事を的確に処理する能力のある人のことです。「敏腕家」「やりて」とも言います。「痴れ者」とは正反対の言葉です。
 
  • 慌て者:そそっかしく、気の早い人のことです。「あわてんぼう」や「せっかち」、「粗忽(そこつ)者」とも言います。
 
  • 曲(くせ)者:正体がつかめないあやしい人、また、油断のならない一癖ある人、という意味があります。
 
  • 食わせ者:外見だけ良くて実質の伴わない人のことです。特に、油断のならない人をさして使います。


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