「傍観」の意味
「傍観」は、そばで何もせずに見ているという意味の名詞です。「傍観する」のかたちでサ行変格活用の動詞として用いることができます。
意味の中で特に重要なのは、「何もせずに」の部分です。ある事柄に対して興味はあるものの、積極的には関わりたくないという様子を表す場合に用いられます。
つまり、「そばで見ている」といっても応援したり何かアドバイスを送ったりするわけではなく、「傍観」はただ単に見ているだけというわけです。
「傍」の字義
「傍」には、「ボウ」という音読みの他に「そば」「はた」「かたわら」などの訓読みが存在します。そのいずれもが、「そば」や「そばに寄る」という意味を表しているのが特徴です。
「傍」を含む熟語では、「傍観」の他にも「路傍(ろぼう)」や「傍線(ぼうせん)」などが比較的よく用いられます。
「観」の字義
「観」には、「カン」という音読みの他にも「みる」「みせる」などの訓読みがあります。単なる「見る」とは異なって、よく見る、注意して見るという意味合いが含まれるのが特徴です。
このことは、「観察」や「観戦」、「観劇」といった熟語にもみてとれるのではないでしょうか。
「傍観」の使い方・例文
- 傍観すらも悪というのなら、もはや誰もが犯罪者扱いされる世の中が訪れるだろう。
- 多数の傍観者がいたことは間違いないが、喧嘩を止めようとするものはいなかった。
- あなたがそこで傍観しているぐらいなら、私としてはむしろいない方が助かるのだが。
「傍観」には、そばで何か事件や事故が起きているにもかかわらず、見ているだけで何もしないという非難の意味が込められることもしばしばです。使用する、あるいは使用された場合には、そのこともよく念頭に置いておくとよいでしょう。
「傍観」の類語
- 座視(ざし)…そばで黙って見ていること。
- 黙視(もくし)…だまって見ていること。
- 静観(せいかん)…物事の推移を見守ること。
- 手を拱く(てをこまねく)…何もしない、またはできないでいること。
- 高みの見物(たかみのけんぶつ)…第三者として事の成り行きを見守ること。
上から四番目の「手を拱く」の「拱く」とは、中国で行われていた敬礼のひとつで、両手の指を自分の胸の前で組み合わせる動作のことです。そうする以外、他の動作をしない、できないという様子を表しているわけですね。
「傍観」を含む四字熟語
- 拱手傍観(こうしゅぼうかん)
- 袖手傍観(しゅうしゅぼうかん)
- 冷眼傍観(れいがんぼうかん)
これらはいずれも「傍観」という熟語を一部に含んでいますが、表すニュアンスはそれぞれ異なります。1が含んでいるのは、「手を拱(こまね)いて」何もしないという意味合いです。
2には、「袖の中に手を入れたまま」何もしない様子を表しています。また、3の「冷眼」が表す意味は「冷ややかな目つきで」ただ見ている様子です。
「傍観」を英語で表すと?
「傍観する」
- look on
- sit back
- stand by
- stand aside
これらはいずれもが、脇で見ているという意味を持った句動詞です。中でも「look on」は、単語同士の意味を足しただけでは「傍観」の意味が出てきにくく、覚える際に注意が必要かもしれません。
「傍観者」
- bystander
- onlooker
- passive observer
- spectator
これら四つのうち、一つめと二つめに関しては先ほど紹介した句動詞を覚えてくことで十分に応用が利くのではないでしょうか。
三番目に含まれる「passive」とは「受け身の」という意味の形容詞です。これにより、積極的には関わろうとしていない様子が十分に表されているといえます。最後の「spectator」は、「見物人」や「観客」などと訳されることも多い名詞です。