「敬虔」の意味
「敬虔」(けいけん)とは、「うやまいつつしむこと」、特に「神仏に服従し、つつしみ仕えること」を意味する言葉です。
「敬」と「虔」、まずはそれぞれの字から言葉の意味を深めておきましょう。
敬
「敬」(ケイ)の字は、「尊敬」「敬う」「敬老の日」など、何かをうやまう、尊んで礼をつくすという意味がよく知られていますね。
成り立ちは諸説ありますが、「髪を振り乱して身体を曲げるさま」の象形と、「つつしむ」意を示す「苟」、そして「右手」が組み合わされることにより、優れたものに対して身体を曲げて祈っているさまを表すと考えられています。
他説では、大きな存在(の威光)に触れることができず、右手を突き出し、身体を捻じ曲げて必死に避けているという考え方もあります。野球で行われる「敬遠」などは、この考えに近いかもしれません。
虔
「敬虔」の「虔」の字は、日ごろあまり見かけないかもしれません。もとは「虎の皮(の美しい模様=文)」を表しましたが、他の字の読みを借りて「つつしみ」の意味で使われるようになりました。
「敬虔」の熟語がよく知られていますが、他に「虔謹」(けんきん:つつしむこと)や「虔誠」(けんせい:つつしんでまことのあること)といった言葉があります。
「敬虔」の使い方
「敬虔」は、基本的には「敬虔な祈り」や「敬虔な信徒」などのように、主に何らかの宗教に属する人の、つつしみ深く、神仏への態度が真面目で誠実な様子を指して使います。
使い方は宗教に限らず、「敬虔な生き方」や「敬虔な心」といった表現も可能ではあります。しかし「敬虔である」ということは、基本的には、私利私欲を抑制し、他者全般、および道徳や倫理に対しつつしみを持って従うというニュアンスを含みます。
神仏や宗教などの諸概念が、世の道徳や倫理を規範化し、理由付けするために生まれたと考えれば、「敬虔な態度」の向こう側に、何らかの神仏のすがたや宗教観念が抽出されるのも道理と言えるでしょう。
例文
- 敬虔なカトリックの家庭に生まれた少女は、時代遅れの厳格な生活に耐えられず、両親の願いとは裏腹に、神を信じぬ娘に育った。
- 宗教に興味がない者でも、「神の家」たる教会に足を踏み入れると、その独特の静けさに、敬虔な気持ちを呼び起こされるものだ。
- 貧しく、病に煩わされる暮らしの中でも、男は敬虔な信仰心を失わなかった。
- 親友の死を看取った彼の胸に、悲しく敬虔な思いが満ちていった。
「敬虔」の英語表現
「敬虔」の英語表現はいくつかありますが、主なものは以下の二つです。(使用頻度が高い「敬虔な」という形容詞形でご紹介します)
- devout(信心深い、誠実な)※「敬虔な人」も表せる
- religious(宗教的な、信心深い)
「devout」は正式なニュアンスの「敬虔さ」を表し、「religious」も「宗教上、求められる良心や資質」といった、格式ばったニュアンスです。
ここまで大げさなニュアンスではなく、「時には敬虔な気持ちになることもある」といった「敬虔さ」であれば、「reverence」(尊敬の念)といった単語が使いやすいでしょう。
例文
- She is a devout Christian.(彼女は敬虔なクリスチャンです)
- We have a very religious group of people here.(ここには、とても敬虔な人たちが集まっています)
- When the boy heard the priest's sermon for the first time, a sense of reverence was evoked in him.(初めて神父の説話を聞いた少年は、敬虔な気持ちを呼び起こされた)