「思惑」とは
「思惑」は、「おもわく」と「しわく」という二つの読み方があります。「おもわく」は、日常的に使われる言葉ですが、「しわく」は、仏教用語であまりなじみがないかもしれません。以下に、それぞれの読み方ごとの意味を紹介します。
「思惑(おもわく)」の意味
「思惑(おもわく)」は、動詞のク語法(活用語の語尾に〔く・らく〕が付いて、全体が名詞化される語法)での意味と、「思う」の名詞化としての意味があります。「思惑」は、もとは「思はく」であったものが「思わく」となり、「わく」に「惑」の字を当てたとされています。
「ク語法」としての意味は、思うこと(名詞的用法)、思うことには(副詞的用法)ですが、これらは古典での用法です。そして、これらの意味が原義となって、以下のような意味に転じています。
- 心の中で考えていたこと。思い。見込み。期待。
- 自分の行為に対する他人の考え、反応、評価。評判。
- 相場の変動を予測すること。また、その予測によって利益を目的に売買すること。
- 人に思いをかけること。恋心。
- 思いをかけた人。恋人。
上記の意味のうち、4と5は古典の用法で、3は証券用語では「思惑買い(憶測や予測、または噂などにより買い取引が増加することで相場が上昇すること)」などで使われています。
「思惑(しわく)」の意味と使い方
「思惑(しわく)」は、修行によって断ち切るべき貪(とん)・瞋(しん)・痴(ち)などの煩悩 (ぼんのう)のことで、「修惑(しゅわく)」とも言います。仏教では、このような煩悩を人が生まれながらに持っているものとしています。
「貪」は「自分の好きなものをむさぼり求める貪欲(とんよく)」、「瞋」は「自分の嫌いなものを憎み嫌悪する瞋恚(しんに/しんい)」、「痴」は「物事に的確な判断ができず迷い惑う愚痴(ぐち)」のことで、これを人間の善根を害する三つの心の動き(三毒)と呼んでいます。
【例文】
- 僕は周りの誰よりも思惑にまみれているようだ。一度、座禅修行をしたほうがいいかもしれない。
- 彼はいつも思惑が邪魔をして、社会で良好な人間関係を構築することができない。
「思惑(おもわく)」の使い方
- 両親の思惑通り、彼女は親の決めた相手と結婚した。
- 周りの思惑ばかり気にして、自分の意見をはっきり言えない私は、彼から「空気読みすぎ」と注意された。
- 学歴も実績もある誠実な人間だと信頼して、彼を重要なポストにつけたのに、まさか会社の金を横領するとは思惑違いもいいところだ。
- 学生時代あこがれていた彼女も同窓会に出席すると思っていたが、思惑が外れてしまった。
「思惑(おもわく)」の類語
「期待」
「期待(きたい)」は、(今までの行動や努力を前提として)将来の良い結果を予想し、待ち望むことです。「期待」は、「思惑」のように心の中で思っているだけでなく、言葉にして伝える場合にも使うことができます。
【例文】
- 君の成績なら東大合格は間違いない。期待しているよ。
- 今回、新規プロジェクトのリーダーを任された僕は、上司や同僚の期待に応えようと頑張った。
「本音」
「本音(ほんね)」は、建前でない本心や思い、本当の気持ちや考え、あるいは本心から出た言葉という意味を持っています。「本音」も外に表さない場合もあれば、表す場合もあります。
【例文】
- 彼は収入も学歴もあってイケメンで、結婚相手としては理想かもしれないが、本音を言えば私の好みじゃない。
- 母の死は悲しいが、気持ちの半分は長い介護生活からようやく解放されたというのが本音だった。
「意思」
「意思(いし)」は、決心した思いや考え、積極的な気持ちのことです。はっきりと「意思」を表明する場合や、親しい人が普段の付き合いから秘められた意思を察する場合もあります。
【例文】
- 故人の意思を尊重して、家族葬によって葬儀を執り行いました。
- 彼は何も言わなかったけれど、本当は彼女と結婚したいというのが彼の意思だったようだ。
「心積もり/心積り」
「心積もり/心積り」は、心の中であらかじめそうしようと考えておくことです。「心積もり」を周囲に表明することはあまりなく、自分の胸の内に納めておくことが多い言葉です。
【例文】
- 今期、営業成績が良かったのでボーナスの心積もりをしていたが、外れてしまった。
- 母と久しぶりに歌舞伎を見に行ったら、劇場で叔母と一緒にいた男性を紹介された。どうやら見合いの心積もりだったようだ。