「メリハリ」とは?
「メリハリ」(減り張り、乙張)とは、「ゆるむことと張ること」を意味する言葉です。
元々は、邦楽における音の抑揚(音が高くなること、低くなること)について言う言葉ですが、近年では主に人間の活動のありかたや緊張の度合いなど、物事の程度を指す言葉として一般に知られています。
「メリ」(減り・乙)
「減り・乙」(めり)という言葉には、「減る(へる)こと」、「音声をゆるめること」「調子を低くすること」などの意味があります。
現代ではあまり見聞きしない言葉かもしれませんが、「減る」(へる)と読めば、普段の様子と比べて何かが減っていて落ちくぼんでいるさまがイメージされるでしょう。
「ハリ」(張り)
「張り」という言葉は、現代でも「意地っ張り」や「張りのある声」といった形で見聞きしますね。その意味は「ひらきのばすこと」「ひっぱる力やその程度」「たるみがなくひきしまっていること」などです。
「メリ」とは対照的に、ぴんと糸を引き伸ばすような緊張感や引き締まった様子を表すのが「ハリ」(張り)です。
「メリハリ」の使い方
「メリハリ」は、主に「メリハリがある」「メリハリを利(き)かせる」「メリハリをつける」といったかたちで、その対象物に「メリ」と「ハリ」、両方がバランスよく混合されている、あるいは両方が周期的に繰り返されるさまを指して使います。
生活の様子、運動や仕事の活性度、動作の機微(きび)、緊張の緩和のバランス、音の強弱・高低、その他数量的に測れる物の多寡(たか)など、非常に広範な物の様子・程度などを対象とできますので、使いこなせると便利な言葉でしょう。
「メリハリ」の持つイメージ
「メリ」は、不活性でエネルギーに乏しい「休息」「静止」「単調」「欠乏」等のイメージ。一方の「ハリ」は、エネルギーにあふれる「緊張」「活動的」「拡大」「増強」等のイメージです。
「メリ」と「ハリ」、物の程度がどちらかに偏りすぎていると、不足あるいは過剰というイメージです。ずっと何もせずぼんやりしている人や、反対にずっと緊張しっぱなしの人を想像すれば、どちらもあまり良い状態とは言えないことがわかりますね。
「メリ」の状態と「ハリ」の状態を適切に組み合わせた「メリハリある状態」は、人間で言えば心身の均衡がとれた健康的な状態、物事の様子・程度でいえば効率的で効果的な出力が為されている状態というイメージです。
例文
- 休息する時間と集中する時間をしっかりと分け、メリハリをつけて物事に臨むのが最も効率的だ。
- 彼女は毎日ぼんやりとして寝てばかりで、生活にメリハリというものがない。
- 速球だけではなない、緩い変化球も織り交ぜた相手ピッチャーのメリハリある投球に、わが球団の打線は苦しんだ。
- 新進デザイナーの彼は、メリハリの効いた色使いで若者に人気のブランドを確立した。
- 視聴者を安心させたかと思えばはっと息を呑ませる、メリハリのある映画が好きだ。
「メリハリ」の類語
緩急
「緩急」(かんきゅう)とは、「ゆるやかなことときびしいこと」「おそいことと早いこと」という意味の言葉です。「メリハリ」と同様、真逆の言葉を組み合わせて「物事の程度」を表す言葉です。
「物事に緩急をつける」ことは、「メリハリをつける」こととほぼ同じと考えてよいでしょう。ただ、「メリハリ」よりも「速度の早い遅い」のニュアンスがやや強い点に注意が必要です。
また、「緩急」には「緩」の字に意味がなくただ「急である」という意味もありますので、そちらもご注意ください。
【例文】
- ゲーム前半は、相手サッカーチームの緩急をつけた攻撃に翻弄された。
- 新人の頃は、「緩急を意識して仕事をしろ、休憩も大事だ」と先輩によく言われたものだ。
バランス
「メリハリをつける」ことは、「メリ」と「ハリ」のバランス(つり合い、均衡)をとること、とも言い換えられるでしょう。
例えば、仕事をするときは仕事に集中する一方、業務時間外や休日は仕事のことは一切考えずに休息や趣味など自分の時間に没頭する、という考え方は「仕事と生活のバランスがとれて」おり、また「メリハリがある」とも言えるのではないでしょうか。
【例文】
- 仕事に没頭して成果を上げても、それで身体を壊しては意味がない。健康のためにバランスある生活を心がけよう。
- この絵画は、明るすぎず暗すぎず、色使いのバランスがいいね。