「ご希望に添えず」とは
「この度は、ご希望に添えず申し訳ございません」というフレーズを聞いたことはありませんか?また、実際に言われた方も多いのではないでしょうか。
「ご希望に添えず」は、店や企業などがお客様や取引相手に対して、要望に応えることができない場合の丁重な断りのフレーズです。ストレートな断りは、相手の心証を害する恐れがあります。そこで、このようなフレーズが使われることになります。
「ご希望に添えず」は、「希望」と「添う」から構成されています。それぞれの意味を見ていきましょう。
「希望」の意味
「希望」は、「物事が実現することを願うこと」または、「将来や未来に対する期待や明るい見通し」のことです。「入学を希望する」や「希望に燃える」というフレーズで使われています。また、「希望」を使った次のような熟語があります。
- 希望小売価格:製造業者が希望する小売価格
- 希望退職:自分から進んで退職すること。または、会社の都合による退職募集に応じること。
- 希望的観測:物事が変わっていく過程を自分の都合の良いように思うこと。
「添う」の意味
「そう」は「添う」「沿う」「副う」の三つの漢字表記があります。漢字表記ごとに意味が変わっています。「副う」は、常用外の漢字です。
①[沿う] 川や道などの長い形状の脇を進むこと。または、決まったことや方針に従うこと。(長い川に沿って歩く。県の方針に沿う。)
②[添う。副う]
- 要望や願いが実現すること。(願いに添う[副う])
- 離れることなくそばにいること。(夫婦で連れ添う[副う])
- 夫婦となって一緒に暮らすこと。(あの二人を添わせることにする)
- 付け加えること。
「ご希望に添えず」の「添えず」は、この②の1の意味です。
「ご希望に添えず」の使い方
- ご希望に添えず、誠に残念ではございますが、今回は採用を見送らせていただきます。
- アドバイスをいただきましたが、ご希望に添えず辞退させていただきます。
- ご注文を受けましたが、御社のご希望に添えないという結論になりました。
- ありがたいご提言をいただきましたが、ご希望に添えずお引き受けいたしかねます。
「ご希望に添えず」の類語
「ご期待に添えず」
「ご期待に添えず」とは、「ご希望に添えず」と同様に丁重な断りを表す言葉です。「期待」は「わくわくして心待ちにしているさま」を表し、「希望」よりも願いの度合いは強い言葉です。ニュアンスはほぼ同様であり、類語と言えます。
[例文]
- ご期待に添うことができず、今回は辞退させていただきます。
- 多くのご要望をいただきましたが、ご期待に添えず申し訳ございません。
「ご要望に添えず」
「ご要望に添えず」の「要望」は、「物事が実現することを強く求める」という意味です。「希望」よりも強い要求に対するフレーズです。
[例文]
- ご要望に添えず、何卒(なにとぞ)ご了承ください。
- ご要望に添えず、ご容赦のほどお願いいたします。
「ご対応いたしかねる」
「ご対応いたしかねる」も、丁重な断りを表すフレーズですが、若干ニュアンスが違います。このフレーズは「処理や行動することができない」という意味から、より突っ込んだ断りを表明しています。
[例文]
- 今回の事案については、ご対応いたしかねます。
- 弊社(へいしゃ)の現状からして、ご対応いたしかねます。
「その他の丁重なフレーズ」
「ご容赦のほど」
「ご容赦のほど」の「容赦」は、「許す。大目にみる」または、「手加減する」という意味です。「許してください」とストレートに言わず、「容赦」という言葉を使って、遠回しに表現しています。
[例文]
- 大変ご迷惑をおかけしています。ご容赦のほどよろしくお願いします。
- 勝手を申しあげますが、ご容赦のほどお願いいたします。
「お力になれず」
「お力になれず」は、「相手の要望に応えることができない」ことを遠回しに表現しています。この言葉も相手に冷たい印象を与えない断りのフレーズです。
[例文]
- お客様のお力になれず誠に申し訳ございません。
- せっかくの申し出に対してお力になれず恐縮しています。