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「召される」ついて
「召(め)される」とは、動詞「召す」に尊敬を表す助動詞「~れる」をつけた表現です。
そのため、「召される」の意味を説明するにあたっては原型の「召す」の意味を確認する必要がありますが、これが大変な多義語です。
したがって、まずは要約として「召される」が表す主な意味を以下にまとめます。
「召される」の主な意味
- 「する」の尊敬語。なさる。
- 「食う」「着る」「(風邪を)引く」「(年を)とる」など、広く「身体に受け入れる」の尊敬語。
- 「(人を)招き寄せる」の尊敬語。および「死ぬ」の意。
- (※スラングとして)「(何かが可愛いなどの感情が高じて)死ぬほどの気分」の意。
4のスラング的意味を除けば、基本的にはすべて何らかの動作にまつわる尊敬語であることを押さえておきましょう。1~4まで、順番に説明していきます。
「召される」の使い方①:「する」
「召される」の第一の意味は、広く何かを「する」という意味です。尊敬語ですから、「なさる」と覚えたほうがよいでしょう。
時代劇などで、「お覚悟召されよ!」(=覚悟しろ)といった言い回しを聞いたことがあるかもしれません。現代語においてはあまり使用されておらず、相手にかなり大仰な印象を与えます。
「お気に召される」のように、動詞の連用形に続く形でその動作に尊敬を込める使い方もありますので覚えておきましょう。
例文
- 「そうあわて召されるな」と、老中は客人に忠告した。
- かの方は、きっと父上の内情を知った上でこの件をお引き受け召されたのだろう。
「召される」の使い方②:「身体に受け入れる」
「召される」の第二の意味は、「食う」「着る」「(風邪などを)引く」「(歳を)とる」「買う」「取る」などのさまざまな動作を表す尊敬語です。
対象となる動作はかなり広範ですが、敬意を込める人物を中心として、その人が周りのあらゆるものをあらゆる動作・現象を通じて「身体に受け入れる」ことを「召す」と表すと考えればわかりやすいかもしれません。
他人が身に着ける衣服のことを尊敬をこめて「お召し物」というのも、「着る」=「召す」から来ている表現です。
例文
- もしお風邪でも召されたら大変です。どうか温かくしてお眠りください。
- あの方は、私たちよりお歳を召されているぶん、私たちよりもさまざまなことを経験していらっしゃるのよ。
「召される」の使い方③:「招き寄せる」「死ぬ」
「召される」の代表的な意味の中には、「招き寄せる」という意味もあります。尊敬語ですから、原則としては身分が上の人間などからある場所・役職に呼ばれるという形で使いましょう。
これに関連して、「召される」には「死ぬ」という意味もあります。生命や魂が「天」や「神」や「自然の摂理」などによって「招き寄せられる」と考えればイメージしやすいかもしれません。
具体的な場所や役職等が文脈にあれば「その場所や地位に招かれる」の意であり、一方「召す」主体にこれといって言及がない場合や、「天に」「命を」などとなっている場合は「死ぬ」意であると解釈しましょう。
例文
- 江戸幕府の調整役として召されてから四十年間、彼は将軍の片腕としてその政治的手腕を振るった。
- 災害によって行方不明となったままの妹のことを、今では天に召されたものと受けとめている。
「召される」の使い方④:「死ぬほどの気持ち」
最後にご紹介する「召される」は、いわゆるオタク用語・スラングとして「(あるキャラクターや作品などへの気持ちが高ぶりすぎ、感動のしすぎで)死ぬほどの気持ち」という意味です。
「天に召される=死ぬ」の意味から派生したスラングと考えられており、高揚感や幸福感の極致を「天に召されるほど」と形容しています。
いわゆる「萌え」や「尊い」といった用語の派生形ですが、「死ぬほど」の気持ちですから、これ以上はない最上級の気持ちについて使う点がポイントです。
例文
- このイケメンアイドルの動画、見ているだけで召される~!
- 知人が飼っている猫が、召されるレベルの可愛さだった。
動詞「召す」について
最後に、動詞「召す」が持つ意味についてざっくりとまとめます。
- ご覧になる。
- お治めになる。
- お呼び寄せになる。
- お取り寄せになる。
- お命じになる(役につかせる)。
- 結婚の相手となさる。
- 捕らえる。
- ~と呼ぶ。
- 身体に引き受ける。
- 乗る。
- 気に入る。
これまで紹介した以外にも、「召される」はこれらの意味を持つ場合がありますのでご留意ください。