「尊い」の意味とは
「尊い」(とうとい、またはたっといと読みます)には「崇高で近寄りがたい。神聖であるまた、高貴である」「きわめて価値が高い。非常に貴重である。たっとい。」「高徳である。ありがたい。」などの意味があります。
「尊い」と「貴い」の違い
「とうとい」とは「身分が高い、きわめて価値があること」を意味します。「尊い」は「両手で酒樽を持って、神に捧げる」という意味から転じて「すぐれた価値がある対象を敬う」「相手に尊敬の念がある」際に使用します。(例:尊い犠牲)
一方の「貴い」には、「貴」に古代では宝物や貨幣として使用されていた「貝」という文字が含まれていることから推察される通り、「値段や価値が高い」際に使用します。(例:貴い経験)
「尊い」は自分自身が対象に関して「とうとぶべき」という感情がある場合、「貴い」は対象が社会的に価値・身分が高い場合に用いられます。近年では「尊い」は人物に対し使用し、「貴い」は物、事柄に使用する傾向が強くなってきています。
「尊い」と「貴い」の対義語
「尊い」の対義語は「卑しい(いやしい)」で、「行為・品性などが劣っており、よく評価できない(例:根性が卑しい)」という意味です。
一方、「貴い」の対義語は「賤しい(いやしい)」で、「社会的な地位や身分が低い(例:賤しい身分)」という意味です。
「尊い」の類義語
「尊い」の類義語には「やんごとない(止ん事無い)」「畏れ多い(恐れ多い)」「気高い」「高潔」「高尚」「偉大」「神聖」などがあります。
ネットでの「尊い」
インターネット上での「尊い」という用語はキャラクターや作品、作品の展開などに対して「ありがたい」「素晴らしい」「最高である」「クオリティが高い」「(対象が好きすぎて、あるいは展開があまりに好ましいため)胸が苦しい」といった、強い興奮や高揚した感情を抱いている状況を表すときに使われます。
漫画、アニメ、ゲームなど「二次元」と呼ばれるサブカルチャー分野のコンテンツに向けて使われていましたが、現在ではジャニーズなどのアイドルや「三次元」の人物に対しても使われます。2007年ごろ登場したと言われていますが、2013年に女性の「オタク」と呼ばれる人々により広まりをみせ、2014年にはかなり一般的に使用されるようになってきました。キャラクターや作品、人物の名前などとあわせて「〇〇尊い」などと使用されています。
「尊い」のほかにも「尊み」「尊き」「尊さ」なども同様に使われています。(例:「はぁ…尊い」「今日も推しちゃんが尊い」「尊みがすごい」)
「萌え」から派出した「尊い」
サブカルチャー分野においては「尊い」より以前に「萌え」という言葉が登場しています。「萌え」はいわゆるオタクと呼ばれる層の人々の間では1980年後半から1990年代初頭にはすでに用いられていましたが、2000年ごろにマスコミに大々的に取り上げられ、2005年にユーキャン流行語大賞を受賞したことにより本来の意味であった「萌え」(「(草木などの)芽が出る」「(物事が)始まる兆し」)よりも広く一般的に認識されるようになりました。
この「萌え」という言葉は漫画、アニメ、ゲームなどに登場する人物やキャラクターに対する「好き」では表現しきれない深い感情(主に恋愛愛情)を表す言葉です。「(思いが)燃え上がる」が転じたものではないかという推察もなされています。当初は少女性の強いキャラクターに対しての庇護欲などを表す言葉として用いられていましたが、最近では幅広い分野での好意や嗜好を表す表現となっています。(例:「好きすぎて萌え死ぬ」「工場萌え」「電車萌え」)
「萌え」という表現では足りないほどの、対象に対する信仰心ともいえる強い感情を表す言葉として「尊い」(他には「しんどい」「沼」など)が登場したとされています。